デイヴィス『ケンブリッジの哲学する猫』
数学者が書いた小説。
イギリスはケンブリッジという世界有数の古い大学街にふさわしい、非常に哲学的(?)な猫の話。
主人公はトマス・グレイという名前の猫。
男名だが、雌猫だ。
猫とは思えぬ優れた知能と深い考察力で、ケンブリッジの学者先生たちを観察する。
のみならず、非常に重大な数学的発見にも寄与する。
その名はついに海を越えてアメリカまで知られるようになる。・・・
わざと哲学書や数学書のような文章が多用されている。
登場人物はガリガリの学者ばかり、その言葉遣いはやたらと学術用語が多くしかめつらしい。
小説の進め方も、まるで学問一筋の学者が難解な教理を説くときのような雰囲気だ。
が、心配はご無用。
全体的には堅い小説ではない。
それどころか、非常にユーモアにあふれた、風刺があちこちに効いた作品だ。
迷い込んできた1匹の猫を立派な一つの人格と認め、その功績をちゃんと評価している。
猫の精神を重んじ対等に扱っている。
学者先生たちが、猫の為に右往左往する様子などは、微笑ましくて暖かい。
(2004.06.26)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ケンブリッジの哲学する猫』
- 著:フィリップ・J・デイヴィス Philip J. Davis
- 訳:深町眞理子
- 出版社:ハヤカワ文庫
- 発行:2003年
- NDC:933(英文学)アメリカ
- ISBN:4150502757 9784150502751
- 236ページ
- 原書:”Thomas Gray, Philosoher Cat” c1988
- 登場ニャン物:トマス・グレイ、メフラウ
- 登場動物:-