『野生動物発見!ガイド』
副題:『週末の里山歩きで楽しむアニマルウオッチング』。
楽しい挿絵、わかりやすく親しみやすい文章、しかし内容は体験に基づいた深いものです。
一見、簡単そうに書いてありますけれど、実は相当な観察眼と、豊富な経験が要求されるのが、アニマルウォッチングです。
たとえば、足跡ひとつとっても、そう簡単に判別できるものじゃありません。
私はいまだに、畑の土に残された足跡の、タヌキとネコの区別がつきません。
同じくらいの大きさの肉球跡でも、イヌなら区別がつきます。
イヌは、つま先を引きずっていたり、前足の跡をきっちり後ろ足が踏まないなど、歩き方がなんとなくだらしないから判別できます。
また、雪上なら、肉球のみならずタヌキは爪跡も残るので、爪を引っ込めて歩くネコと区別がつくのです。
しかし、畑の団粒土では、雪ほど鮮明な足跡とならず、何年経っても、私にはなかなか区別がつきません。
この本のお陰でわかったこともあります。
うちの畑を荒らすのは、シカだという人と、イノシシだという人、さらにヌートリアだという人までいて、いずれも地元のお年寄りですから信憑性があり、判断に困っていたのですが、この本を片手に畑に残された様々なサインを調べた結果、多分、ヌートリアは来ていないが、シカとイノシシは両方とも来ていると確信できました。
年間を通してならシカの方が回数は多いけれど、イノシシも来るときは続けて来る。
道理で作物が次々と食べられるわけです。
葉や実を食べられるならまだしも、ただ蹴散らされていることもしばしばです・・・
薄い本ですが、良くポイントを抑えてあるので、哺乳類の観察なら、この1冊をマスターすればかなり上級者となれるはずです。
ただし、先にも書きましたように、それは簡単なことではありません。
何回も本に立ち返って、読んでは観察し、観察してはまた本で確かめしないと無理でしょう。
ある動物の残したサインを読み取れたときは感動します。
まして実物を観察できたときは感激します。
糞の写真が多いのはうれしいのですが、白黒なのが残念です。
糞の写真だけでもカラーで載せて欲しかった。
しかし有難いことに、著者福田氏のホームページにカラー写真で載っています。
ぜひご覧あれ。
全体として、とても良くできた、有用な本だと思います。
また、
アニマルウォッチングとは直接関係ないかもしれませんが、山での重要な心得も書いてあります。
道に迷ったと思ったら、疲れていてもつらくても、まず知っている場所まで戻りましょう。
どうしても知っている場所に戻るのが難しかったら、斜面を登り、尾根道に出てください。尾根道を歩いていくと必ず登山道やハイキング道路に合流します。
特に「迷ったら登る」が大切だと思います。
多くの人が、麓に降りれば人里に出られると考えて、山を下り、遭難騒動となります。
迷ったら登ってください。
(2009.11.3.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『野生動物発見!ガイド』
週末の里山歩きで楽しむアニマルウオッチング
- 著:福田史夫(ふくだ ふみお)
- 絵:武田ちょっこ(たけだ ちょっこ)
- 出版社:築地書館
- 発行:2007年
- NDC:482(動物学)
- ISBN:9784806713487
- 169ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:日本の野生動物たち
目次(抜粋)
はじめに
準備編~出かける前に知っておきたいあれこれ
動物ウォッチング・実践編~日本に生息する出会いやすい哺乳類16種
その他の哺乳類
もっと詳しく知るために
*本書で取り上げられた動物30種(五十音順。*は移入種)
アカゲザル*
アカネズミ
アナグマ
アブラコウモリ
アライグマ*
イタチ
イノシシ
オコジョ
カモシカ
カヤネズミ
キツネ
キョン*
シカ
ジャワマングース*
タイワンザル*
タヌキ
ツキノワグマ
テン
ニホンザル
ニホンリス
ヌートリア*
ノウサギ
ハクビシン*
ハツカネズミ
ヒミズ
マスクラット*
ムササビ
モグラ
モモンガ
ヤマネ