ゲティングズ『猫の不思議な物語』
西洋では猫は神秘的な、ときには魔性の動物だった。
日本にも化け猫や猫又の伝説があるが、西洋の悪魔や魔女伝説の恐ろしさとは比べものにならないように思われる。
西洋では、猫は魔女の伴侶として長い間虐待された。そのような迷信が排除されてからも、猫は神秘な動物として、さまざまな象徴としてとらえられた。
この本は、主にオカルト的視点から猫を眺めた本である。
真の猫属は、それ自身の内的気質によって、生まれながらのオカルティストである。
(p.23)
猫がいかに神秘的な動物としてとらえられてきたか。
猫が象徴したものは何か。
古代エジプトでの猫の地位。
文芸での猫の扱い。
そして、お決まりの、猫と魔女の関係。
猫愛好家というよりむしろ、「オカルト」に興味がある人たちに奨めたい本だ。「猫は興味ないけれどオカルトは大好き」とうい人には面白いだろうが、その逆、「(生物としての)猫は好きだけどオカルトは興味ない」という人にはあまり楽しめないかもしれない。話題がけっこう飛ぶので、オカルトや西洋思想についてある程度の知識がないと、我々日本人には理解しにくい部分もあるかもしれない。
しかし、これも「猫史」なのだ。あがめられたり、誤解されたり、おとしめられたり、賛美されたり。猫は古代から神秘の象徴だった。現代でも、神秘的な動物であることにかわりはない。
同じゲティングスの作で『悪魔の事典』という本があるらしいが、私は見たことがないので内容はわからない。うちにある『悪魔の辞典』といえば、アンブローズ・ビアスの著によるもので、これは「悪魔についての事典」ではなく「悪魔用の辞典」の意である。それによれば、「猫」とは『家庭内で事がうまく行かなかった場合に蹴飛ばすために自然が用意してくれた、柔らかくて、けっして壊れることのない自動人形。』!ひどい書かれようだ。
少なくともゲティングズ氏はビアスより猫を丁重に扱っている事は確かだ。
(2009.4.18.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫の不思議な物語』
副題、シリーズ名など
- 著:フレッド・ゲティングズ Fred Gettings
- 訳:松田幸雄・鶴田文
- 出版社:青土社
- 発行:1993年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:4791752554
- 324 + xiiページ
- カラー、モノクロ、口絵、画像
- 原書:”The Secret Lore Of The Cat” c1989
- 登場ニャン物:多数
- 登場動物:-
目次(抜粋)
まえがき
夜の象徴の猫/アンクと女神ヴィーナス、他
はじめに
アグリッパのモットーと仏陀の死/どうして猫は自己中心的か、他
第一部 永遠の猫
1 魔法の目
猫の視力と月/イェーツのミナルーシュ、他
2 魔法の名前
「プス」から「キャット」への変化/「長靴を履いた猫」-「シャ・ボッテ」、他
3 文学のなかの聖猫
「馬小屋の猫」/「託宣猫」、他
4 霊猫
猫と人間/エーテリックの猫、他
5 芸術のなかの象徴の猫
原型としての猫/月の相、他
第二部 怪猫
6 魔性の猫
猫反対運動と教皇グレゴリウス9世/猫属の悪魔、他
7 魔女の伴侶
落ちた猫のこと/魔女の使い魔、他
むすび 九の魔法
九柱の神々と女神たちと、神秘的な三つの三位一体
参考文献
訳者あとがき
索引