宇江佐真理『深川にゃんにゃん横丁』
人情あふれる下町に住む猫たちと人間たち。
江戸時代。
深川にある、人一人がようやく通れるような、ある狭い小路は、猫の取り道にもなっていて、必ず一匹や二匹の猫を見かける。
その町の住民達にも猫好きが多く、路上の立ち話といえば猫の話題がもっぱら。
野良猫たちもここではあまり人を恐れない。
いつしかその小路は「にゃんにゃん横丁」と呼ばれるようになっていた。
にゃんにゃん横丁に住む住民達、いずれもしがない町民ばかりだが、とはいえ平和な日々ばかりではない。
殺人のような凶悪事件こそないけれど、それなりの事件はおこる。
その度に、大家の徳兵衛や、岡っ引きの岩蔵、書訳の富蔵、幼なじみで男勝りのおふよ等は、心を痛めたり、走り回ったりと、翻弄されることになる。
猫たちは、活躍するというほどではないが、シーンのあちらこちらに出てくる。
当時のことだから、不妊手術なんてものはない。
雌猫は次々と子猫を生む。
住民達は子猫の行く末を案じ、具合の悪い子がいれば手当をしたり、飼い猫に昇格させてやることもある。
人間達も、猫たちも、のんびりと自然体で、その暮らしぶりは贅沢とはほど遠いけれど、暖かくて居心地よさそうで、猫も人も家族も他人もお互いに寄り添い助け合いながら、せちがらい世の中を頑張っている、そんな、なんとなくふうわりと懐かしい世界に、一気に読んでしまえる時代小説だ。
(2009.1.2.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『深川にゃんにゃん横丁』
- 著:宇江佐真理(うえざ まり)
- 出版社:新潮社
- 発行:2008年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784104422043
- 252ページ
- 登場ニャン物:まだら、るり
- 登場動物:-