灰谷健次郎『ろくべえ まってろよ』

灰谷健次郎『ろくべえ まってろよ』

 

児童文学短編集。

児童文学で有名な灰谷健次郎の作品集。
文庫本なので、漢字にルビはふってありませんが。

「ろくべえ まってろよ」

犬のろくべえが、穴に落ちてしまいました。
深くてまっくらな穴です。

1年生の子供たちには、ろくべえを助け出すことができません。
こまった。
こまった。

お母さんたちを引っ張ってきましたが、お母さんたちも、穴をのぞき込み、
「無理よ」
「男でなくちゃ」
と帰ってしまいました。
今日は日曜日ではないから、お父さんたちはいないのに。

どうしょう
どうしょう
みんな半分泣きそうな顔をしています。

そのとき、かんちゃんがある方法を思いつきます。
めいあん
めいあん

1年生たちが思いついたその名案とは?

「しかられなかった子のしかられかた」

ゆうこちゃんのお父さんは、とってもすてきなお父さんです。
ゆうこちゃんととっても仲良しです。

でも、どんなに頼んでも聞いてもらえないことが、一つだけありました。
それは犬を飼うこと。

お父さんが犬嫌いというわけではありません。
それどころか、お父さんのいう事は、しごくもっともな事でした。
もうすぐマンションから庭のある家に引っ越すから、それまで待てというのでした。

ところがゆうこちゃんは待てません。
だって、おばちゃんの家では、もう子犬が産まれているのですから。

お父さんお母さんに内緒で子犬をもらってきちゃったゆうこちゃん。
ところが子犬が逃げ出して・・・

「さよならからんみきぼうはうまれた」

みきぼうは、ぼくの弟。
泣き虫で、いくじのない奴。
でも仲良しなんだ。

あるとき、となりのおばちゃんから、ヒヨドリの雛をもらった。
おばちゃんは、すずめの子だとおもっていた。
ところが僕たちがしらべたらヒヨドリの子だった。

さて、ヒヨドリの雛を育てることになるのですが、この時のお父さんがなかなか素晴らしいのです。子供たちみんな(7人兄弟!)で育てるというのを、こういってたしなめます。

「生き物はだれか一人が、ちゃんと責任を以て飼わんといかん。みんなで飼っていると、はじめのうちはめずらしいからいいようなおんの、だんだんあきてきて、そのうち、人任せになってしまう。めいわくするのは生き物や。一人が責任をもってほかの者は、それに協力するというのが、一番ええ」
page131

私はこのお父さんのセリフにしびれました。
本当の意味で生き物たちのことを慈しむ人でなければ、このようなセリフは出てこないでしょう。
児童文学者・灰谷健次郎氏が、本当の慈悲心を持った方とわかる場面です。

*****

全編がそんな優しさと慈愛に満ちた本です。
児童文学にしておくには惜しいほどのきらめきがあります。
ギスギスした今の世の中、大人の方がこういう本を必要としているかもしれませんね。
(猫が出てこなかったのだけが残念ですが。)

なお、私が持っているのは新潮文庫版ですが、現在は手に入らないようです。他社の版でお求めください。

(2012.7.18.)

灰谷健次郎『ろくべえ まってろよ』

灰谷健次郎『ろくべえ まってろよ』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『ろくべえ まってろよ』

  • 著:灰谷健次郎(はいたに けんじろう)
  • 出版社:新潮文庫
  • 発行:1987年
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:4101331057 9784101331058
  • 217ページ
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:ろくべえ(犬、『ろくべえ まってろよ』)、ちび(犬、『しかられなかった子のしかられかた』)、ピーコ(ヒヨドリ、『さよならからみきぼうはうまれた』)

 

目次(抜粋)

ろくべえ まってろよ
マコチン
マコチンとマコタン
なんやななちゃん なきべそしゅんちゃん
子どもになりたいパパとおとなになりたいぼく
しかられなかった子のしかられかた
さよならからみきぼうはうまれた
ふたりはふたり

ちょっと疲れたサンタクロース(落合恵子)

 


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灰谷健次郎『ろくべえ まってろよ』

4.7

動物度

5.0/10

面白さ

6.0/10

猫好きさんへお勧め度

3.0/10

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