映画『ひまわりと子犬の7日間』

映画『ひまわりと子犬の7日間』

 

保健所職員の苦悩がよく描かれた映画。

日本は、今現在、狂犬病に汚染されていない、世界でも数少ない国のひとつである。狂犬病を撲滅できた国は、日本のほかは、英国、アイルランド、アイスランド、北欧3国、オーストラリア、ニュージーランド等。
世界の大半が今でも狂犬病発生国である。

狂犬病は、一度罹患してしまうと、致死率が極めて高い。
人間が発病すると、ほぼ100%死んでしまう。
インドでは近年でも年間2万人も狂犬病による死者が出ているそうだ(WHO、2008年)。

そんな恐ろしい狂犬病を日本が駆逐できた裏には、保健所の役割が大きかった。それはまぎれもない歴史上の事実である。そのことを、われわれ日本人は決して忘れてはならない。

が、・・・

狂犬病が発生しなくなった今、保健所にはつらい任務だけが残った。
収容した犬猫を処分=殺す、という任務である。

*****

一軒の農家で、子犬達が産まれた。

「この子は育たないかもしれんなあ」と1匹の子犬を不安そうに見つめるお爺さん。
「育てますよ!」と意を固めるお婆さん。

お母さん犬と人工哺乳の共同作業で、子犬たちは無事育ち、そして、貰われていった。あの小さかった子犬と、母犬が残った。

ある日、母犬は、雄犬から子犬を守って咬み殺されてしまう。

ひとり残された子犬は、お爺さんとお婆さんの愛情を一身に受けて、すくすく育つ。
三角にピンと立った耳。
きりりと巻いた尾。
りゅうとした立ち姿の、立派な日本犬に成長する。

けれども、お婆さんが亡くなり、お爺さんは仕方なく老人ホームへ。

「あいつのこと頼むぞ!お願いだぞ!」

老人ホームへ向かう車の中で必至に頼むお爺さん。
車を追いかけようと暴れる愛犬。

なんということか、首輪が外れてしまう。
車を追って走る犬の上に、情け容赦のない雨が・・・


お爺さんの匂いは雨で消えてしまった。

*****

場面はかわり。

神崎彰司は、元は動物園の飼育係りだった。
妻ともそこで出会い、娘と息子が産まれた。

が、妻を交通事故で無くし、動物園も閉鎖されて、今は保健所の職員である。
収容された犬猫の世話をし、そして・・・ガス室のボタンも押す。

犬たちに与えられた時間は、たった7日間。
7日の間に引き取り手が現れなければ、収容犬は殺処分される決まりだ。

神崎は里親探しに日々奔走する。
チラシを作り、あらゆるツテに声をかけ、自分の家族にも協力をあおぐ。子供たちは「臭い」と虐めを受けながらも、動物達のために必死で頑張る。
さらに収容期間を勝手に延長しては上司に怒られる。
なのに市民からは「我々の税金を犬なんかに」と文句を言われ、愛犬家からは「犬殺し」とののしられる。

そんな神崎の前に、一匹の野犬が現れた。
あのお爺さんの元愛犬だった。
子犬を育てている真っ最中だった。

*****

保健所職員さんの苦悩がよく描かれている。
実際、大変な苦労を伴うお仕事だろうと思う。

悪いのはなんといっても、第一に犬猫の世話を途中放棄する飼い主。
それから法律。

けれども映画の中でのように、意図せぬ放棄もある。
現場の職員さんにできることは限られていて、いくら努力しても現法律下では全員は救えない。

見ている私も、悔しくて悔しくて涙がでた。
悲しいとか、哀れとか、嬉しいも多少はあったけど、ほとんどは悔し涙だった。
それも滂沱の涙である。悔し涙が止まらない。

無力な自分が悔しい、もどかしい。
これほど多くの篤志家たちが動いているのに、変わらぬ法律が悔しい、もどかしい。

この映画をご覧になったら、つぎに犬や猫を迎えるときは、是非ぜひ、保健所/センターから迎えてあげてください。
動物を飼うなら、寿命を全うするまで、決して見捨てないでください。
日本の法律が変わるよう、署名などにご協力ください。

どうかどうかお願いします。

*猫は出てきません。

(2015.5.23)

映画『ひまわりと子犬の7日間』

映画『ひまわりと子犬の7日間』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

映画『ひまわりと子犬の7日間』

  • 出演: 堺雅人, 中谷美紀, 吉行和子, でんでん, 若林正恭(オードリー)
  • 監督: 平松恵美子
  • 販売元: 松竹
  • DVD発売日: 2013年
  • 時間: 117 分
  • JAN: 4988105101968
  • 登場動物:ひまわり(和犬)と子犬たち、他の犬たち

 


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