加藤由子『すぐできる かわいい猫の手入れとしつけ』

簡潔かつ要領よく。
猫飼育初心者向けに、猫飼育全般について、解説した本。
イラストも多く、わかりやすい。
その分、文章も少ないから、簡単な説明となってしまっている感は否めないけれど。
まずは、昔の本の定番、「良い子猫」の選び方。
いつも私がひっかかってしまうところ。
読者がこういう情報を求めていることはわかる、だから出版社もそういう編集をしなければ売れないという事情もわかる、だから著者も書かざるを得ないという事情もわかる、わかるけど、よくわかるけど、それでも・・・
猫の命を、貴重な命を、良い、悪いって・・・
うちの子たち、選別して迎えた子なんて、誰もいませんよ。
人間の子どもだってそうでしょう。産まれて来た子がうちの子。
産む前に、これが良いあれは嫌なんて選別はしません。
(可能であれば、思い切り選別したい親は多そうですけれどね)
幸い、この加藤由子さんの本は、ペットショップからの購入は数行、ブリーダーからの入手はもう少し多く、そして一番行数が多いのは、里親募集や、保健所などの保護猫の引き取りになっていて、すこしホッとする。
大人の猫を引き取る良さもちゃんと書いてある。
残念ながら、多くの本は逆の構成。
「良い子猫」の選び方を延々と書いた後「里親募集や保健所等から引き取るという方法もあります。」と、とってつけたように1~2行書いてあるだけの本が多くて。
と、褒めた後に、何ですが。
最後の章が「猫の妊娠と出産」で、22ページもついやして詳細に書かれてあり、これでは繁殖を奨励しているかのようにも受け取られかねないのが、私としては残念だ。
やたらと繁殖させるべきではない理由を、丁寧に詳しく、もっと書いて欲しかった。
たとえば、里親募集がきわめて困難なこと。
保健所に引き渡したらほぼ確実に殺されてしまうこと(本が書かれた当時、積極的に猫の里親募集をしている保健所なんてなかった)
毎年数十万頭(執筆当時)の犬猫が殺処分されていること。
等々。
「里親探しは早めに」ではなく「里親を見つけるのは困難、全員を育てる準備と覚悟がないかぎり、決して安易に産ませるべきではない」と誘導して欲しかったなあ、ってこと。
・・・と、著者がほかならぬ加藤由子さんだけに、辛口批判。
まあ、この本は今は昔の前世紀(1995年)に書かれた本。
今執筆されるなら、このような構成にされないだろうとは信じています。

加藤由子『すぐできる かわいい猫の手入れとしつけ』

加藤由子『すぐできる かわいい猫の手入れとしつけ』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『すぐできる かわいい猫の手入れとしつけ』
- 著:加藤由子(かとう よしこ)
- 出版社:高橋書店
- 発行:1996年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:447108139x 9784471081393
- 194ページ
- モノクロ
目次(抜粋)
- PART1 よい猫を手に入れるポイント
- 猫を飼う前のチェック・ポイント
- ねこの幸せは飼い主で決まる
- その他
- PART2 猫を飼う準備と知っておきたいこと
- 用意したいペット用品
- 初めての日に気をつけたいこと
- その他
- PART3 猫の食事と栄養
- 猫の栄養、この程度は知っておこう
- 猫の食事学
- その他
- PATR4 猫の上手なしつけ方
- しつけの基本
- トイレのしつけ
- その他
- PART5 猫の手入れのしかた
- そろえていグルーミング用品
- コーミングとブラッシング
- その他
- PART6 ペットライフを2倍楽しむために
- 猫とのホットなスキンシップ
- 猫との遊び方いろいろ
- その他
- PART7 猫の健康管理
- 季節の管理―春
- 季節の管理―夏
- その他
- PART8 猫の妊娠と出産
- 猫の性成熟と発情
- 上手な交配のさせ方
- その他