松原真琴『そして龍太はニャーと鳴く』

100年以上生きてきた不思議な猫。
その猫の名は、
『私はフェリス・カートゥス。猫の中の猫という意味で、自らを学名で呼ぶのだ』
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白い美しいオス猫。人語を解すばかりか、読むこともできます。
飼い主の名は横川龍太、高校生。出会ったのは龍太がまだ五歳だったころです。
大抵の猫は人語を約二割程度しか解さないが、私は完全に人語を理解している。しかし私の方がいくら人語を解そうとも肝心の人間の方が私の言葉を解さないのでは一方通行も甚だしい。気が遠くなるほど長い間、私は自分の言葉を理解出来る人間を捜し続け、そうしてようやく見つけたのが龍太、つまりは今の飼い主なわけだ。
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言葉が通じ合うのは、フェリスと龍太の間だけです。龍太の母の龍美でさえ、フェリスの言葉は理解できません。ただのニャーニャーとしか聞こえないのです。
当然ながら、フェリスと龍太の間には強い絆が生まれています。
このペアと町の猫達が、力を合わせて事件を解決していく話です。事件と言っても、殺人事件など残虐な出来事は全然出てきませんから、子供でも安心して読めます。でありながら、大人が読んでもしっかり楽しめる動物ミステリー風小説です(風、とつけたのは、ミステリー=推理小説というほどの推理物でもありませんので)。猫達はいきいきと描かれていますし、人々の猫に対する態度も好意的、著者の猫好きがそのまま文章にあらわれているような作品です。猫好きさんにとくにお勧めな本です。
収録されているのは2編+巻頭におまけの短いマンガ。以下、ごく簡単に。
「そして龍太はニャーと鳴く」
龍太の周囲でなぜか交通事故が続いた。フェリスはどこか怪しいと気づく。これは、何かの霊のせい?だとしたら、どんな霊?猫ならではの調査網と、猫ならではの霊感で、龍太を 従えて と一緒に、真相にせまる。
「出世払いで夕食を」
龍太は幼いころ、誘拐されたことがあった。それがまた何とも妙な誘拐だった。あまりに無防備な誘拐犯に、かえってフェリスは不安を募らせたり・・・
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『そして龍太はニャーと鳴く』
- 著:松原真琴(まつばら まこと)
- イラスト:久保帯人(くぼ ちて)
- 出版社:(株)集英社インターナショナル
- 発行:2002年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4087031225 9784087031225
- 220ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:フェリス(シロ)、ミルキィ、ミミコ、トウフ、コジロウ、エゾマツ、アブラゲ、ミケ、ウオカズ、ヒーロー、マンジュウ、カノコ、マトリョーシカ(マリー)、他
- 登場動物:ー
目次(抜粋)
スペシャル・コミック「よるのはなし」
そして龍太はニャーと鳴く
出世払いで夕食を
あとがき
【推薦:もも様】
長い年月を生きて人間の言葉を理解する猫・フェリスと、その言葉を理解する高校生の男の子の話。
ご近所の猫達と協力して事件を解決するミステリーっぽい一面もありますが、基本的には心温まるほのぼのしたお話です。
去年の冬頃書店で見つけて、タイトルに可愛さにひかれて買ったのですが、もう本当におもしろかったです。
飼っている猫に対する見方が変わりました。
ウチの妹(小学5年生)もむさぼるように読んでました。
オススメです。
(2003.5.1)
*サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。