武藤眞『「猫は三年の恩を三日で忘れる」は本当か?』
昔から伝わる諺を現代獣医学で説明すると?
猫と人間には、もはや、切っても切れぬ縁がある。
猫と同じ屋根の下で暮らしてきた人間達。
当然ながら、猫にまつわることわざ・俚言も多々産まれてきた。
それらのことわざ、生物学的・獣医学的な根拠はあるのか?
もしあるとすれば、どういう意味?
「猫糞」の本当の理由は?
「猫舌」なのはなぜ?
「借りてきた猫」はどうして大人しいの?
猫って「猫をかぶる」動物なのか?
昔から伝わることわざや言い伝えを、現在の獣医学で説明していく。人間側のとんでもない誤解だったり、意外と真実を言い当てていたり。
時にはチクリと皮肉をいうことも忘れない。
たとえば『猫に小判』の章ではこう書く。
名誉、地位、権力、財産など、人間の欲望の対象となるものはいくらでもありますが、これらはしょせん人間社会の基準でしかなく、動物全体の社会から見れば、まったく価値のないものなのです。これらの欲望によって、人間は争いを引き起こし、過ちを繰り返してきました。
逆に考えると『猫に小判』という言葉は、ネコのように小判に価値を見いださなければ、人間も無駄な争いをする必要がなくなるという、昔の人の戒めが込められたことわざなのかもしれません。
p.178
著者は獣医学部助教授(本著執筆時)だが、内容はむしろ文系的な、読み物としても面白い内容となっている。
なお、最終章の第六章は『猫&CAT 言葉小辞典』となっていて、猫のことわざだけでなく、「ネコエイズ」「ねこふんじゃった」「山猫スト」など、様々な言葉が22ページに渡って解説されている。
(2008.7.16)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『「猫は三年の恩を三日で忘れる」は本当か?』
キャットおもしろことわざ学
- 著:武藤眞(むとう まこと)
- 出版社:PHP文庫
- 発行:1997年
- NDC : 645.6(畜産業・家畜各論・犬、猫)
- ISBN : 4569570046
- 227ページ
- 登場ニャン物 : -
- 登場動物 : -
目次(抜粋)
- 第1章 行動編「猫糞」は生死をかけた究極の選択
- 鳴く猫鼠取らず
- 三年になる鼠を今年生まれの猫子が捕らえる
- その他
- 第2章 からだ編 ネコは本当に「猫舌」である
- 女の心は猫の眼
- 女の腰と猫の鼻はいつも冷たい
- その他
- 第3章 感情編「借りてきた猫」は人見知りのせい
- 皿なめた猫が科を負う
- 猫をかぶる
- その他
- 第4章 感覚編「猫の寒恋い」は見かけだけ
- 猫の寒恋い
- 猫の九生あり
- その他
- 第5章 コミュニケーション編「猫かわいがり」はネコを早死にさせる
- 猫かわいがり
- 猫の子はなぶるとやせ、犬ころはなぶると肥ゆる
- その他
- 第6章 ネコ語編 猫&CAT言葉小辞典