ネコ大好き倶楽部編『雑学 ネコと気持ちが通じあうちょっとしたコツ』

まさに雑学集。
「猫ブーム」がはじまるずっと前に書かれた本だけど。
はっきり言ってこの本は「猫本は売れるらしい」と知ったライター達が、にわか猫知識をかき集め、一冊の本にまとめ上げたではないかと思う。 情報がごった煮状態で詰め込まれているだけで、全体のコンセプトが見えない。
猫という動物は、今でもほとんどが気ままな外出自由猫、不妊手術は一部の物好きがしているだけ、という見方のようだし、野良猫捨て猫問題等は一言も言及されていない。
私が気が付いた明らかな誤りは一カ所だけだったが、他にも、誤りとはいえないまでも、私としては「え?」と思われるような記述がちらほらあった。ネコや猫を取り巻く環境を知らなさすぎるといわざるを得ない。
その誤りとは90p「・・人間のツメと同じでどんどん伸びてくる。ネコはツメを研ぐことで先端を削り落として鋭利にし、・・・」の箇所。ネコの爪研ぎが、先端を削り落とす為の物ではないことくらい、猫好きなら誰だって知っている。
「え?」と思った一番の箇所は、猫の出産にまとわる記述である。
文章の背後に「飼い主さえ欲しければ産ませることに問題はない。子猫は貰い手を探せばよい」という安易な思想がはっきり読み取れる。保健所の悲惨さも、捨て猫のみじめさも、猫害の深刻さも、猫人口の飽和も考えたことがない人間の文章としか思えないのだ。
例えば、避妊手術は「できることなら手術をしないですませたいと思う人も少なくないだろう」、「今は妊娠されては困るけれど、やがては血のつながった子ネコが欲しいと願っている飼い主さんもいるだろう」、そんな「悩める飼い主にとって朗報といえそうなのが」インプラント避妊薬だと書き、「薬の効果は一年間。その後は再び妊娠できる状態に戻るというわけである」。
この章などは、インプラント避妊薬というものが世の中にはあるのだぞという知識のひらけかしにしか見えないのは、私の考えすぎだろうか。
これ以外でも、あまりに無頓着なと思える記述があちらこちらにある。特にしつけに関する記述など、きっと文献を抜粋しただけで実際に猫と暮らしたことはないのだろうと思わせられる。
情報量は多いので、目的をしぼった参考書としてなら、有効な本かもしれない。
しかし、題名通り「雑学」に過ぎないと言って良い内容なので、まあ、とてもお暇なら読んでください、程度かな。
今の時代、もっと真剣に考えた内容でないとだめですよ。
(2003.6.9)

『雑学 ネコと気持ちが通じあうちょっとしたコツ』

『雑学 ネコと気持ちが通じあうちょっとしたコツ』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『雑学 ネコと気持ちが通じあうちょっとしたコツ』
- 編:ネコ大好き倶楽部
- 出版社:永岡書店
- 発行: 1998年
- NDC : 645.6(畜産業・家畜各論・犬、猫)
- ISBN : 4522834578
- 254ページ
- 登場ニャン物 :-
- 登場動物 :-
目次(抜粋)
- 1章 ネコともっと仲よくなれる17のコツ
- 鳴き声でわかってあげようネコの気持ち
- ご機嫌ナナメのネコをなだめる「秘策」とは
- その他
- 2章 ネコの習性・しぐさを理解する16のコツ
- ネコの「スリスリ」や「モミモミ」にはこんあ理由があった
- 人間の指やセーターを吸うなんて、ウチの子はちょっと変なの?
- その他
- 3章 よきパートナーになってもらう19のコツ
- 悪さをしかるなら「現行犯」でなきゃ意味がない
- ふだんの振る舞いは上品なのにどうして食事マナーは最悪なの?
- その他
- 4章 ネコの不思議がわかる18のコツ
- マタタビであんなにメロメロになっちゃうのはどうして?
- ネコは快適スポットを見つけ出す名人だ
- その他
- 5章 ネコのSOSを読み取る16のコツ
- ネコだってつらい便秘はクセにしないこと
- いまどきのネコはストレスがいっぱい
- その他
- 6章 いまどきのネコライフがわかる15のコツ
- ペット用エステで美人ネコにみがきをかける?
- 効き目が1年続く「インプラント避妊薬」とは
- その他