薄井ゆうじ『天使猫のいる部屋』
電子猫とは?。
1996年、「たまごっち」が爆発的に流行した。1999年にアイボが市販された。この本は、それらの電子(機械)ペットを先取りする内容で、1991年に発表されている。
グラフィックデザイナーの「僕」は、ある日、奇妙な注文を受ける。猫の手を本物そっくりに作って欲しいというのである。なんとか仕上げると、次は耳、さらにしっぽ、と、つぎつぎに注文される。どうやら注文主は天才ゲーム・プログラマーらしい。
「僕」は、実際に猫を飼って観察しながら、ひとつひとつ丹念に仕上げていく。何ヶ月もかけて、やっと猫の体の全パーツが揃った。
そして、それは「電子猫」として発売されることになる。
パソコン画面から出ないという点を除いては、本物そっくりな猫、販売もおもちゃ売り場ではなく、ペットショップで・・・
そして、物語は思いがけない方向に展開していく。
本物の猫も一応登場するが、あくまで脇役。主役はコンピュータ画面である。
お勧め度があまり高くないのは、本物の猫の活躍が少ないから。小説としては面白かった。
もしこの本を、書かれた年(1991年)に読んでいたら、パソ音痴の私には今ひとつ実感として理解できなかったかもしれない、しかし、今なら誰でもよく理解できるだろう。
10年前ではなく、今読んでよかったと思った。
(2003.3.6)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『天使猫のいる部屋』
- 著:薄井ゆうじ (うすい ゆうじ)
- 出版社:角川春樹事務所
- 発行:2000年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4894567032 9784894567030
- 297ページ
- 登場ニャン物:スス、スシヤ
- 登場動物:-