非日常実用講座2『ライオンの飼い方』
副題:猛獣・海獣・珍獣・巨獣といっしょに暮らす!!。
私の子どものころの夢は、大型ネコ科と一緒に暮らすことだった。
さすがにライオンは大きすぎると思ったが、チーターならなんとかなるだろうと信じていた。小学校低学年で、『小学館の動物図鑑』を丸暗記していた。学校の図書館で同じ図鑑を見つけたときは、色が鮮やかなのに驚いたものだ。私の図鑑はボロボロで、どのページも色あせていた。色あせるほど見たからだった。全校生徒が使う図書館の図鑑より、私の一冊の方がはるかに使い込まれていたのである。
また、小学校高学年のときは、小学館・学研・講談社の『動物図鑑』3冊を、毎晩枕元に置いて寝た。学校で、火事など万が一に備え逃げるときの用意は枕元に置くと良いと教わったからだ。今考えれば、教師は当然、防災グッズを意図していたのだろう。しかし、当時の私にとって、真っ先に持って逃げるべきものといえば、『動物図鑑』以外に考えられなかった。
そのくらい、動物好きな子どもだった。
今でも、そりゃライオンと暮らしてみたいとは思う。チーターと鼻キッスしたり、カラカルをじゃらして遊びたいと思う。
しかし、一個人が野生動物を飼うべきでないことも理解している。
だから、飼わない。残念だけど。
この本は、あくまで夢の本である。「決して趣味本意で一緒に暮らすべきではない動物たち」であることを100%理解している人のために書かれた夢物語である。「あり得ない」ではなく、「(一般人は)してはいけない」ことをリアルに夢見て書いた本である。だからこそ楽しいワンダーランドである。できるだけ具体的に、細部にまでこだわって、とことん夢見たワンダーランド。
ところが世の中にはバカな人間もいるもので、密輸入してまで珍獣を飼おうとする。結果、手に余って野に捨てる。うちの周辺にもアライグマが生息している。平気で窓から家の中を覗いているところをみると、あるいは捨てられたペットかもしれない。テレビでは、ニシキヘビやワニ、カミツキガメ、サソリなど、日本にいるはずがない動物たちの捕獲ニュースが絶えない。
さらに、タレントが珍獣としばらく一緒に生活する番組まである。あれは止めて欲しいと思う。動物に対する間違った知識を広めかねない内容だし、もし珍獣を手に入れようとするバカが増えたらどうするんだと思う。
ライオンと暮らすのは、夢の中だけにしよう。しなきゃならない。
しかし夢の中なら、どんな生物とでも一緒に暮らせる。
ワンルームマンションでも、大型動物たちと暮らせる。
すばらしい。
本の「あとがき」で、ワシントン条約のことが書かれている。野生動物を飼育すべきではないことが書かれている。
そして、こう締めくくられている。
当研究会では、こうした野生動物たちが条約や国内法によって保護され、21世紀には再び群れを成して大地を駆けまわり、空を羽ばたくことを願わずにはおられません。大繁殖が現実のものとなれば、それこそ野生動物と人間が一緒に暮らすことも夢ではなくなるのです。
(p.221)
この本に込められた本当の目的は、「珍獣を飼うこと」ではなく、「野生動物保護に人々の目を向けさせること」にあるのである。
最後に「非日常研究会会訓」を。
(1)実践的な研究者であれ!
(2)人類と地球環境に寄与する研究者であれ!
(3)シャレのわかる研究者であれ!
カバー裏より
(2008.6.3.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
非日常実用講座2『ライオンの飼い方』
猛獣・海獣・珍獣・巨獣といっしょに暮らす!!
- 著:非日常研究会
- 出版社:同文書院
- 発行:1995年
- NDC:480(動物学)
- ISBN:4810372480
- 221ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:
目次(抜粋)
まえがき
ワンルームにも五分の魂
動物たちのお値段
第1章 ライオンの飼い方
第2章 ゾウの飼い方
第3章 キリンの飼い方
第4章 ゴリラの飼い方
第5章 ダチョウの飼い方
第6章 ラクダの飼い方
第7章 パンダの飼い方
第8章 コアラの飼い方
第9章 ナマケモノの飼い方
第10章 コビトカバの飼い方
第11章 ペンギンの飼い方
第12章 アシカの飼い方
第13章 ラッコの飼い方
第14章 イルカの飼い方
あとがきーワシントン条約について
参考文献・取材協力先一覧