赤川次郎『三毛猫ホームズのプリマドンナ』
三毛猫ホームズは、猫でありながら、人間をはるかに凌ぐ頭脳の持ち主。
片山義太郎は、警視庁捜査一課刑事なのに、血に弱い・美人に弱い・情に弱い。
妹の晴美は、いつも好奇心いっぱい、兄より事件解決に熱心。
石津は目黒署刑事、晴美にぞっこん、忠実な飼い犬のように晴美に従っている。
三毛猫ホームズのプリマドンナ
声楽のコンクールで、事件が起こる・・・かも、しれない?
要注意人物は、遅れてやってきた上、出場者だというのに参加票を持っていなかった母娘・・・
珍しく、誰も死なない一作。殺人未遂ですんでよかったニャ。
三毛猫ホームズのモーニング・コール
晴美は二人でホテルに泊まっていた・・・ホームズとふたりで。
自宅アパートが工事の為、避難してきたのである。
そこへ、頼んでもいないモーニングコールが何回も?
三毛猫ホームズの古時計
別荘地に、殺人犯が逃げ込んだ。
意味もなく人を殺す快楽犯だ。
その別荘地では、ある資産家の老人が、家族全員を集めて誕生会を開いていた。
三毛猫ホームズの青春ノート――小さな自伝
この作品は、副題の通り、自伝です。赤川次郎氏の小さな自伝です。
自伝と言っても、ほとんど読書論といいますか、読書録といいますか、若い頃の赤川次郎氏が、どのような本に出会い、どのように読んできたかが、書いてあります。
三毛猫ホームズは出て来ません。
この中に、私がもろ手を挙げて賛成する記述があります。
これははっきり申し上げられますが、ダイジェストした小説は、小説ではありません。〈子供向き〉と帯をつけて、名作のあらすじを書きぬいたような本くらい、実は「子供向きではない」ものはない、と思います。
子供には、その年齢の子供のために罹れたオリジナルな小説を読ませなくてはいけません。どんなお粗末なダイジェストであれ、読めばストーリーくらいは分かります。それが、オリジナルを読むとき、どれだけ感興をそぐでしょうか。
どんな古典であれ、すぐれた小説は面白いのです。色々な意味で面白い、その面白さの重要な一つに、「筋の面白さ」があることは間違いありません。
子供が本好きになるように、と、「少年少女版世界名作全集」などを与えている親は、実は、せっせと子供を本嫌いにしているのです。
page 150
まったくもって200%、その通りだと思います!!!
最近は、世界の名作をダイジェストするだけでなく、さらにマンガ化すること、それも売れないマンガ家のまずい絵にしちゃう大バカ出版社なんてのも少なくありませんが、アレ、百害あって一利なし!
ましてや、大人向けに、「これさえ読めば名作を読まなくても知ったかぶりできる♪」みたいな、マンガダイジェスト版。
論外です。名作に対する侮辱以外の何物でもありません。
小説は、原作のまま、読むこと。
外国語や古典の場合はなかなかそうもいきませんが、外国語ならできるだけ名訳といわれる訳で、古典は原文付きの口語訳で、そしてできれば、その作品が書かれたと同じような媒介の上で・・・つまり、もし紙に万年質で書かれたものなら紙の本で、縦書きに書かれたものなら縦書きで・・・読むのが最適と思っています。
もちろん、もし最初からモニターで読まれることを想定してパソコン等で書かれた小説なら、モニター上で読むのが一番良いのです。
これからはそんな小説が激増しそうですね。
* * * *
私にとってこの一冊は、ホームズシリーズの中でも、ピカイチの本なのです。
赤川次郎氏の自伝も大変興味深く、すごい親近感ですてきなのですが、もうひとつ。
挿絵が良いのですよ!
ホームズが、とても可愛く、しかもちゃんと描かれています。
拍手~~
(1989年1月20日)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『三毛猫ホームズのプリマドンナ』
- 著:赤川次郎(あかがわ じろう)
- 出版社:光文社 カッパノベルズ
- 発行:1989年
- NDC:913.6(日本文学)短篇推理小説集
- ISBN:4334027970
- 190ページ
- 登場ニャン物:ホームズ
- 登場動物:-m
目次(抜粋)
- 三毛猫ホームズのプリマドンナ
- 三毛猫ホームズのモーニング・コール
- 三毛猫ホームズの古時計
- 三毛猫ホームズの青春ノート――小さな自伝