赤川次郎『三毛猫ホームズの仮面劇場』
片山が骨折、ホームズは湖に消える!?
人生に絶望した3人が集められ、奇妙な仕事が与えられた。
家族としてリゾートのロッジ(ホテル)で1カ月間過ごせば多額の報酬を出すという。
が、もし本当の家族でないことがバレたら、そこで終わり。
また、何か起こるかもしれないから気をつけろ、とも。
あまりに奇妙な仕事だったが、どうせもう人生は無いものとまで追い詰められていた3人は承諾する。
一方。
立てこもり事件から人質を救い出した片山義太郎。
ご存知、警視庁捜査一課の刑事である。
救助の際に、名誉の(?)負傷をし、しばらく休養を余儀なくされた。
どうせ休養するなら、自然に囲まれた土地でと、ギブスの体ででかけたが、
もちろん、片山・妹の晴美・自称恋人の石津・そして三毛猫ホームズがそろえば、何も起こらないハズがない!
ロッジへ向かう寝台車の中で、はやくも不審な人物に出っくわす。
家庭内暴力から逃げてきた少女を保護して、一緒にロッジに到着。
そのロッジは、旧華族の別荘を数度にわたって改造してホテルにしたものだった。
壁には元持ち主が描いたという、見事な肖像画があった。
見事な絵・・・と聞けば、栗原課長(片山の上司)が東京で大人しくしていられるわけもなく。
かくて、メンバーが勢ぞろい。
まずあらわれたのは、なぞの美女。全裸・・・
今回はホームズは、出番がごく少ないのです。
湖に落ちて、行方不明になって、晴美や石津は一応探しますが(片山はギブスの松葉づえなので役に立たない)、どうやら生きているらしいとわかった時点で積極的な捜索は放棄。
ホームズはふつうの猫じゃないんだからそのうちに出てくるでしょ、と冷たい。
再会時は駆け寄ってヒシと抱き合いますけれど。
私や、私のサイトの常連さんたちなら、生きているらしいとわかったらますます熱心に探すんだけどなあ。1分1秒でも早く無事に保護してあげたいから。
最近、どうも晴美のホームズへの態度が気に入らない私なんですよね。
ま、晴美はホームズの飼い主という自覚はないみたいだけど。
だって、こんな会話がでてくるんですよ。
「ニャー」
「この猫もいいかしら?」
「どうぞとても頭のいい猫ですってね、飼主に似て」
「『似ず』の間違いじゃない?」
と、晴美が言った。
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晴美が自分の事を「頭が悪い」なんて、間違えても言いそうにない。
「飼主に似て」といわれて間髪入れず「『似ず』じゃない?」と答えた晴美は、やっぱり、飼い主は兄・義太郎だと思っているんだろうなあ。
本来の飼い主であるはずの片山兄妹より、猫恐怖症の石津の方が、ホームズを大切にしているように見えてならないんですけれど。
行方不明になっていつもまっさきに心配するのは石津、最後まで探しまわるのも石津、ホームズのご機嫌を常に気にしているのも石津。
義太郎は頼りにしているだけだし、晴美に至っては都合よく使っているだけのように見えます・・・
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『三毛猫ホームズの仮面劇場』
- 著:赤川次郎(あかがわ じろう)
- 出版社:KADOKAWA 角川文庫
- 発行:平成27年(2015年) ©right;2002
- NDC:913.6(日本文学)推理小説
- ISBN:9784041031629
- 296ページ
- 登場ニャン物:ホームズ
- 登場動物:-