バターワース『大きなたまご』
まちがいなく、恐竜児童文学の最高傑作。
ネイト(ネイサン・トゥイッチェル)は、12歳の少年。アメリカはニューハンプシャー州フリーダムに住んでいます。典型的な田舎町。一本の道の両側に並んでいる少しの家のほかには、店が一軒と教会がひとつ。そのほかには何もないような、のどかな場所です。
ネイトのお父さんは、新聞を発行していました。週一回のささやかな地方紙。そのほかには、ニワトリを飼い、ヤギも1頭飼い、野菜畑もありました。まさに「牧歌的」を絵にかいたような生活です。
そんなのどかな生活に大事件が勃発します。
めんどりのお腹が妙に膨らんできました。そしてある日、大きなたまごを産みました。めんどりの体とおなじくらいもある、それはそれは大きなたまごでした。
めんどりはびっくりしながらも、健気に温めます。ネイト少年も、熱心に世話をします。
何週間もかかって、ついに、そのたまごが孵りました。中から出てきたのは、なんと!!!
トリケラトプス!!??!!!!!
にわとりが産んだ大きなたまごから、生きた恐竜、トリケラトプスの赤ちゃんが孵化しちゃった♪
うわあ、大変!
たまたま町に居合わせた古生物学者のチーマー先生と、ネイト少年の大活躍が始まります。
赤ちゃん恐竜は「アンクル・ビーズレー」と名付けられました。ものすごい食欲で草を食べ、ものすごい勢いで成長します。こんな大きな生き物を、ネイト家の裏庭にいつまでも置いておくわけにはいきません。なんたって、生きた恐竜なんです。
さあ、どうしよう?
* * * * *
子どものときに、夢中になって読んだ本。図書館で、何回も何回も借りて読みました。
その本が岩波少年文庫で再版されていることに気づいた次の瞬間にはもう、カートにいれていました。
読み返してみて、やっぱり面白~~い!!!最高傑作!すばらしい!
児童書ですが、もちろん大人でも思い切り楽しめます。子どもなら、恐竜との冒険にワクワク、大人なら、それに加えて作品に秘められた大人社会への皮肉にニンマリ。変な話ですが、あのトランプ氏がアメリカの大統領となっている今、ますます面白おかしく読めるような気がします。こういう大人、いるよなあ。どーしよーもない大人たち!
挿絵もよいです。いかにも60年前のアメリカって感じで。この古い挿絵をそのまま使ってくださった判断に感謝。これが最新の日本風アニメ調だったら興ざめしちゃうところでした。さすが岩波書店です。・・・と思いつつ読んだら、「あとがき」で訳者の松岡亨子氏も、同じ感謝の言葉を書いていました。
この本、出版当時のアメリカでも大人気だったそうです。テレビ番組になり、等身大のトリケラトプスも作られました。その「アンクル・ビーズレー」、なんと今でもみられるようです。”Uncle Beazley” National Zoo Washington, D.C.で検索してください。(前脚が爬虫類のようにガニマタだったりと最新の恐竜学とは少し異なる姿ですが、60年前の復元ですからその辺は大目に見てください)。トリケラトプスという恐竜は、今でも大人気で、「ジュラシックパーク」はじめ恐竜映画には必ずどこかに登場するほどですが、この人気の理由のひとつに『大きなたまご』という本の存在は欠かせないと思います。今恐竜映画を作っている大人たちの多くが、子ども時代に『大きなたまご』を読んで興奮したのではないでしょうか。
私も、トリケラトプス、大好きです。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『大きなたまご』
- 著:オリバー・バターワース Oliver Butterworth
- 訳:松岡亨子(まつおか きょうこ)
- さし絵:ルイス・ダーリング Louis Darling
- 出版社:株式会社岩波書店 岩波少年文庫
- 発行:2015年
- NDC:933(英文学)児童書
- ISBN:9784001142266
- 296ページ
- モノクロ
- 原書:”The Enormous Egg” c1956
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:アンクル・ビーズレー(トリケラトプス)、エゼキエル、めんどり、(以上にわとり)、