バロウズ『内なるネコ』
波乱万丈な人生を送った男にとって、猫とは。
この本は、W.バロウズ氏の作品を色々読んでいる人が読むべき本ではないかと思う。私は残念ながら氏の著作を他にひとつも読んでいない。なので多分全然理解できていない。きっと氏のファンならこの本に感動するのではないかと思うのだが。
解説によれば、バロウズ氏は『アメリカで一番変わり者の、おじいさん作家』で『アングラ業界のゴッドファーザー』だそうだ。代表作「裸のランチ」は映画化された。そして、バロウズ氏は、妻を誤って銃殺してしまうという過去を持つ。
そんな氏の屈折した心の中をネコ達が現している。「ネコは精神的な仲間、おなじみさんとして生まれ、以来ずっとその役を担っている」と氏は書いている。多分氏にとってはまさにその通りなのだろう。
ほとんどのページが、半分、時には数行しか文章が書かれていない。余白の非常に多い作り方。
余白=余韻である。
和のわび・さびの世界にも通じそうな空間構成。
数奇な生涯を送った老作家が、70歳記念出版に選んだ本がこの「ネコの本」なのである。W.バロウズのファンの方はぜひどうぞ。
なお、「ターザン」等の著者E.R.バロウズとは別人ですから念のため。
(2004.02.12)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『内なるネコ』
- 著:ウィリアム・バロウズ William S. Burroughs
- 訳:山形浩生
- 出版社:河出書房新社
- 発行:1994年
- NDC:934(英文学)アメリカ。随筆、エッセイ
- ISBN:4309202349
- 112ページ
- 原書:”The Cat Inside” c1986
- 登場ニャン物:ラスキー、フレッチ、その他
- 登場動物:-
目次(抜粋)
- 内なるネコ
- 解説
- 年譜・書誌