コーツワース『極楽にいった猫』

コーツワース『極楽にいった猫』

 

涅槃図と猫のおとぎ話。

掲示板に、詳細なご紹介をいただきました。まずそれをお読みください。

【推薦:きな様】
これは、1931年(昭和16年)にアメリカで出版された、日本を舞台にした猫のお話です。
むかしむかし、貧しい絵師がばあやと暮らしていました。食べ物にも事欠く生活の中、ある日ばあやが一匹の猫を連れて帰ってきます。初めは猫を嫌った絵師ですが、それはかわいらしい三毛猫を見たとたんに飼うことに。
不思議なことに、「福」と名付けられた猫が来てから、絵師には運が向いてきて、ある日お寺のご住職から「涅槃図」を依頼されます。釈迦の生涯に思いをはせ、真摯に取り組む絵師。そんな絵師を見守るかのように、傍を離れない猫。
ところが、絵が出来上がってくるにつれて絵師にはひとつの悩みが。
それは、「涅槃図」に猫を描き入れてはならない、という慣例でした。猫はじっと絵師を見つめています。それはまるで、
「きっと、きっと次にお描きになるのは猫ですよね。お釈迦さまがお亡くなりになった時に集まってきた動物のなかに、きっと猫を描いてくださいますよね」
と言っているようでした。
絵師は悩みます。悩んで・・・、そして。

コーツワース『極楽にいった猫』

コーツワース『極楽にいった猫』

☆☆☆ 以下、ネタバレです ☆☆☆

絵師は涅槃図に猫を描き入れます。
猫は出来上がった絵をじっと見つめ、それから絵師を見つめ、そして・・・死んでしまいます。
「あまりの幸せに、もうこれ以上生きていられなかったのです」って。
正直、この展開はどんなもんか?と思いました。けれど物語は、その後4頁残っています。そして・・・、
いえ、それは読んでみてくださいということで。
残念ながら猫は生き返りませんが、猫に対する愛情は生きている・・・そう言っておきますね。
ご存知の通り、涅槃図に猫はいないことになっているのですが、調べてみると「猫のいる涅槃図」はいくつか描かれているのです。
有名なのは京都・東福寺の「猫入り涅槃図」ですが、他にも東新寺や本果寺(静岡)・東善寺(群馬)・林性寺・雙林寺など。
作者コーツワースは、大正時代に来日したことがあるのだそうです。
その時に、これらの「猫のいる涅槃図」のどれかを見たのかもしれません。
東福寺の「猫入り涅槃図」には、絵師明兆に絵の具を献じた猫の伝説が 残っているそうですし、また雙林寺にもこんな逸話があるそうです。
http://www.vill.komochi.gunma.jp/bunkazai_mura01.html
もしかしたら、コーツワースはこれらの話も耳にしたのかもしれません。
猫が死んでしまうことの他にも、「あれ?」と思うところがいくつかありました。
つまり、どことなく「なんちゃってニッポン」なんです。
それでも読み終わった時に、暖かい気持ちが残ります。
70年以上も昔に、ひとりのアメリカ女性が日本の仏教と猫をテーマに、慈愛とは何かという小説を書いた・・・それが「暖かい気持ち」のもとになっているのかもしれません。
小さい薄い本ですが、訳も・・・そしてほんわかした猫の挿画も素敵です。
(2004.7.29)
★アメリカで最も権威のある児童文学賞「ニューベリー賞」大賞受賞作品です。

コーツワース『極楽にいった猫』

コーツワース『極楽にいった猫』

詳細なご紹介をありがとうございました。
もうこれ以上、管理人の私が書くコトもないと思われますので(汗)、ちょっと脇道にそれた話を。

猫は涅槃図にふつうは描かれていません。多くの動物たちが描かれているのに、なぜ猫はいないのかということは、しばしば話題にされますが、

曰く、猫は騙されて間に合わなかった。
曰く、猫は信心深くない、自分勝手な動物だから。
曰く、アフリカ産の猫(イエネコ種)は、当時のインドではまだ一般的な動物ではなかった。
等。

私は最後が主な理由だろうと思うのですが、「必ず虎や獅子(ライオン)は描かれているのだから、それで十分じゃない?」とも。私の目には、猫と犬はあきらかに違う動物だが、猫とトラ・ライオンは同じ仲間にしか見えないんですよね。

それに、猫には何といっても、大変重要な役目がありました。仏典をネズミ害から守るという役目です。涅槃図の中に描かれるどころか、涅槃図そのものを守るのが、猫の役目だったのです。猫が日本に来たのだって、そもそもは仏典と一緒に、仏典を守るためでした。

ですから、猫が仏様の覚え良くないワケがないと思うのです。それどころか、仏様は猫たちをことのほか慈しみ大切に思われているに違いないと思いたいのです。少なくとも我が日本では、仏教と猫とは密接な関係を保ちながら共存してきました。

ですから、この物語の最後のほう・・・きな様は「この展開はどんなものか?」と書いていらっしゃいますが、私は「日本なら、それもありかも?」と思ってしまうのです。仏教学上はあり得ない展開かもしれませんが、これはおとぎ話。仏典を命がけで守ってきた猫(当時、海を渡るということは文字通り命がけでした)こういう猫だっているかもしれません。

児童書なのであっという間に読めます。今は、紙の本では中古でしか手に入らないようですが、電子書籍ではすぐ読めるようです。読めばきっと暖かい気持ちになれます。ぜひどうぞ。

コーツワース『極楽にいった猫』

コーツワース『極楽にいった猫』


コーツワース『極楽にいった猫』

コーツワース『極楽にいった猫』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『極楽にいった猫』

  • 著:エリザベス・コーツワース Elizabeth Coatsworth
  • 訳:古屋美登里(ふるや みどり)
  • 挿画:くすはら順子
  • 出版社:清流出版
  • 発行:2003年
  • NDC:933(英文学)アメリカ
  • ISBN:4860290631 9784860290634
  • 84ページ
  • モノクロ
  • 原書:”The Cat Who Went To Heaven” c1930
  • 登場ニャン物:福
  • 登場動物:象、馬、水牛、鹿、猿、かたつむり、ほか

 

著者について

エリザベス・コーツワース Elizabeth Coatsworth

詩人、児童文学者。1893年に生まれ、1986年に死去。幼いころから両親とともにアルプスやエジプトを旅する。ヴァッサー女子大学卒病後、コロンビア大学で博士号を取得。その後ひとりで東洋の国々をまわる。1931年に『極楽にいった猫』でニューベリー賞の大賞を受賞。動物をテーマにした児童文学のほかにも、小説、エッセイなど多くの作品を残した。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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コーツワース『極楽にいった猫』

8.2

猫度

9.0/10

面白さ

7.5/10

猫好きさんへお勧め度

8.0/10

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