東川篤哉『ライオンは仔猫に夢中』

シリーズ『平塚おんな探偵の事件簿3』。
金色に近い茶髪のショートヘアー、猛獣を思わせる鋭い目つき、その瞳はブラウン。そんな彼女の名は野生のエルザ、いえ、生野(しょうの)エルザ。名前の通り?見た目も性格も、まるで野生のライオン。細身の身体に黒い革ジャンとデニムパンツがよく似合う。
その隣に、猛獣使いの調教師よろしく立っている地味~な、いえ、ごく常識的にふつうな女性の名は川島美伽。
彼女らは、自称(?)「平塚でいちばんのガールズ探偵ユニット」である。海猫ビルヂング三階「生野エルザ探偵事務所」の探偵と探偵助手だ。

東川篤哉『ライオンは仔猫に夢中』
第一話 失われた靴を求めて
警察が自殺と判断した女性は、実は、殺人だった?
猫は出てきません。
第二話 密室から逃げてきた男
モテないデブ男にふりかかった災難の謎を解く。
猫が重要なヒントとなる作品です。登場ニャン物は、クロ(名前だけ)と、このときはまだ無名の白い子猫。
猫の登場場面は少ないのです、でも、書かれている内容や、ガールズ探偵たちの会話に、著者の猫愛を感じられる作品となっています。猫に興味のある人でなければ知らないことがヒントのひとつとなっています。
この作品で、飼い主を失った白猫は、以後、エルザの飼い猫となり、探偵事務所のマスコット的存在となります。
第三話 おしゃべり鸚鵡を追いかけて
自宅で事故死した高齢男性が飼っていたオウムが逃げ出した。男性より「自分に万が一のことがあったら、オーちゃんを頼む」と言われていた姪が、オウム捜しを探偵事務所に依頼してきた。
エルザが、猫だけでなく、オウムの生態についても意外と詳しいことが知れる作品。さすが自身がライオン(のような女性)なだけあって、ネコ科だけでなく、生きもの全般について一般より知識豊富なようですね。
もう少しでこのオウムも飼うことになりそうでしたが、オウムの寿命を考えてエルザが否定。読者としてはちょっと残念です。ライオン(のような女性)と、猛獣使い(のような女性)と、白猫ミーコと、オウムの掛け合いを読みたかったところでした。
なお、エルザはこの作品中で負傷してしまいます。
第四話 あの夏の面影
前作で負傷したエルザだったが、野生的体力で、回復も早かった。
リハビリ後の最初の仕事として、浮気調査といういかにも探偵事務所的な仕事を引き受ける。
平凡で地味な調査のはずだったのに、思わぬ展開が・・・!
この作品は、多くの女性ならピンとくる、しかし男性には思いもよらない、そんなストーリーではないでしょうか。著者の東川篤哉氏は男性ですけれどね。そういうことを気にする女性が身近にいらっしゃるとか?
白猫ミーコちゃんは全然活躍しませんが、探偵事務所を訪れる依頼人たちには人気です。事務所のマスコット的存在になっています。

東川篤哉『ライオンは仔猫に夢中』

東川篤哉『ライオンは仔猫に夢中』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ライオンは仔猫に夢中』
平塚おんな探偵の事件簿3
- 著:東川篤哉(ひがしがわ とくや)
- 出版社:祥伝社
- 発行:2017年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784396635268
- 251ページ
- 登場ニャン物:クロ、ミーコ
- 登場動物:オーちゃん(オーム)
目次(抜粋)
第一話 失われた靴を求めて
第二話 密室から逃げてきた男
第三話 おしゃべり鸚鵡を追いかけて
第四話 あの夏の面影