出久根達郎『猫も杓子も猫かぶり』

『猫の似づら絵師』シリーズ第3弾。
『猫にマタタビの旅』続編。
銀太郎は猫の似づら絵、つまり、猫の似顔絵を専門に描いている貧乏絵師である。
いくら悠長な江戸時代といっても猫の絵の注文がそうそうあるものではない。
いつも懐はぴいぴいいっている。
ある日、行方不明の猫を探すポスターを40枚も頼まれた。
さらにその猫を探してくれと言う。
頼んだのは町方同心。なんでもその猫が殺人に関係あるという。
銀太郎にとっては大口の注文だ。
一方、銀太郎の親友で貧乏神売りの丹三郎も、福の神をあてていた。
いや、「貧乏神」を売っていた。
猫人形を大量に扱っている大店にである。
正月早々、景気がよい。
しかし、長屋の隣人で二人の恩人(?)源蔵老人は、気をつけろと言う。
役人の手伝いなどして事件に巻き込まれないかと危惧したのだ。
事件どころではなかった。
銀太郎は命を狙われることになる。
猫をまつった猫明神、猫で財をなした猫大名、猫同伴で大奥入りしたお姫様、猫を使った殺人計画、猫人形に猫富くじ、猫税、猫一揆、猫不要の養蚕業、・・・
猫、猫、猫の本である。
生身の猫は全然活躍しないのだが、文中には猫、会話にも猫、猫の文字がどのページにもうるさいくらいに躍っている。
最初から最後まで猫づくしの、軽妙な時代小説。
ミステリーの要素もたっぷり。
やはり、出久根達郎の本は面白い!
(2004.10.2)

出久根達郎『猫も杓子も猫かぶり』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫も杓子も猫かぶり』
- 著:出久根達郎(でくね たつろう)
- 出版社:文藝春秋
- 発行:2004年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4163232303 9784163232300
- 364ページ
- 登場ニャン物:みい、銀
- 登場動物:-
目次(抜粋)
- 猫の寄り合い
- 御用の筋
- 貧乏神売り
- 目隠し
- 猫明神
- 赤猫
- とんとん唐辛子
- 芥船
- 蛇の目
- 貸本屋
- 姫の身の上
- 再び赤猫
- 清貧の人
- 水の上
- 芥の中身
- 旅の衣
- 高崎の雨
- 吾妻太平記
- 鼠退治
- 猫の島
- 春や春