五味靖嘉『縄文柴犬ノート』
副題『正しい犬の見方・考え方』。
私事だが、2015年末、迷い犬を発見した。
ガリガリに痩せ、尾も頭も低く垂らして、フラフラ歩いている。
当地は、緯度標高のわりには、雪の多い山間地だ。12月後半から雪が積もり始め、年によっては3月末まで消えない。
そのまま放置すれば、餓死か凍死が必須。
保護するしかなかった。
なんとか保護したあとも、人を極端に恐れ、私にさえ触らせない。
様子から、生まれつきの野良犬ではなく、虐待されたあげくに捨てられた元飼い犬と思われたが・・・
「猟犬だろう」というのが、獣医さん他、犬ベテランたちの見解。
猟犬にするつもりが、犬の扱いが下手で訓練に失敗した挙句、邪魔犬と虐待、ついに山に捨てられたらしい。
この犬、ゴンが、すごいキツネ顔だった。
額は広くて、ストップ(額段)がごく浅い。
マズルは太くて長い。
目は三角の釣り目、耳は前傾して凛と立つ。
背中はまっすぐで、胸が深く、ウェストは引き締まり、巻き尾。
狼爪はないが・・・
↓ゴンの横顔と一般的な柴犬の横顔の比較↓
ゴンを見たある柴犬愛好家が興奮して、「すごい縄文顔!縄文柴ですよ、これ!」と、「縄文柴犬研究センター」に問い合わせてくれた。
(が、終始「まず入会金と年会費を払って会員になってください」の一点張りで、写真を見ようとさえ言ってくれなかったそうな・・・汗)。
私は血統”書”には興味ないから「縄文柴犬のお墨付き」を貰えるかどうかなんて無関心だが、犬一頭を世話するにあたって、その血筋を知ることは大切だと思っている。
品種によって、性格や、体質、かかりやすい病気が変わってくるからだ。
前置きが長くなった。
縄文時代の遺跡から、ヒトの骨と一緒にイヌの化石が出土することがある。
縄文時代のイヌのいちばんの特徴は、
積極的に改良された証拠が見られれず、「小型の犬で、額が広く後頭部が発達し、ストップが浅く面長で、口吻部は太く頑丈である」という顔貌が(おおよそ1920)以降からの多くの研究成果で述べられています。
page7
そして、
縄文時代の犬1と、一般的なシバイヌ2と、縄文柴犬3を区別して理解する必要があるのです。つまり、縄文時代の犬とは違うのですが、それを相似する犬、という意味で「縄文柴犬」とし区別する必要がありました。
page7
頭蓋骨以外にも、縄文犬と、現在の一般的な柴犬とでは、細かい相違点がある。
犬ブログなど見ていると、最近は、見た目重視で「可愛らしい」柴犬ばかりが増えているように思えてならない。
丸い頭に(=ストップが深くなる)、ちょこんと子犬のようなマズル、体はどんどん小型化し、鳩胸の後ろに、むっちりとした前肢がついている。かわいいけど、本来の柴犬からはどんどん離れているような?
では、縄文柴犬とはどんな犬か。
新しい犬種ではない。
縄文時代の遺跡から出土する縄文犬によく似た古い形の柴犬を、縄文柴犬と呼んでいるのだ。
縄文柴犬の外見的特徴を簡単にまとめると、
- 額が平坦に近い、即ちストップがない或いは弱い(page27~)
- 耳は、犬の顔を正面から見て、全体的なバランスが良く、側面からは前傾し、しっかり立っている(page31~)
- 目は、品位ある形で、沈着して、概ね三角形に見える(page32~)
- 口吻は太くよく伸びて締まる(page37~)
- 肩幅は正面から見て広がらず、側面から見ると胸が深く船底方で、頸や頭部と調和している(page54~)
- 背はまっすぐで、腹は腰に向かって贅肉が無く、緊密で、強く締まっている(page55~)
- 四肢は筋肉が良く発達して、強健でありながら柔軟性があり全体にクセがない。俊敏で音もなく走り回る(page59~)
全体的に、原初的で、まるで小型のオオカミのような犬、それが縄文柴犬なのである。
実際、日本の柴犬は、「世界中の犬種の中で最もオオカミに近い」といわれる犬種であるが(注)、その中でも、縄文柴犬は、とびきりオオカミ系ということらしい。
(注=2012年アメリカ “National Geographic”誌。85種類の犬の遺伝子を科学者たちが分析。どの犬もWOLFLIKE(オオカミ系)、HARDERS(牧畜犬系)、HUNTERS(猟犬系)、MASTIFFLIKE(闘犬系)の遺伝子を持っているが、遺伝子構成上、最もWOLFLIKEだったのが柴犬。ちなみに第二位はチャウチャウ、第三位はまた日本犬の秋田犬。)
縄文柴犬のもうひとつの際立った特徴は、その身体能力の良さ。
ジャンプ力があり、さらに、犬なのに、イヌの手首はネコのように回転しないのに、あっと思うようなところを登ってしまう。
本では梯子を上る犬が紹介されている。
ネットでは木に登る犬の写真がある。
そしてうちのゴンは、フェンスを登ってしまう。高さ2mの金網フェンスを、猫のようによじ登って、脱走してしまった(!)。
フェンスの上に大きな返しをつけて、今はなんとか脱走を防いでいるけど。
なんという犬たちだろう!
縄文柴犬。
すばらしい。
(とはいえ・・・「正しい犬の見方・考え方」なんて副題は、私にはちょっと傲慢すぎるように思えてならない。
だって、もし、もしもですよ、世間が「正しい日本人は」なんて言い出して、江戸時代や平安時代の人骨を基準に、「身長は150cm前後、顔は扁平で目は一重、胴は長くてウェストのくびれはないか弱い、それが正しい日本人だ」、なんていわれたら・・・
少なくとも私はそんな世界イヤです!)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『縄文柴犬ノート
正しい犬の見方・考え方
- 著:五味靖嘉(ごみ やすよし)
- 出版社:精巧堂出版
- 発行:2012年
- NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
- ISBN:9784904082171
- 157ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:犬、オオカミ
目次(抜粋)
- 縄文柴犬ノートによせて・・・新見治一
- 総論
- 1.経過
- 2.何故縄文柴犬と呼ぶか?
- その他
- 第1章 頭蓋・顔貌
- 1.縄文時代のイヌとの相似性
- 2.保存の理由
- 第2章 体躯・胸・四肢
- (1)体躯構成という概念
- (2)雄と雌の体躯の相違点
- その他
- 第3章 思い出の犬
- はじめに
- (1)第二中市
- その他
- あとがき
ゴンが登っているのは、高さ200cmの内扉(ワイヤーメッシュで自作)。
ドッグランから脱走しようと登ったけど、私が来たので、あわてて戻るところ。
ドッグランを囲むフェンス全体には大きな返しをつけているの乗り越えられないのですが、内扉の上だけは、返しが無いことに気づいたようです。
ここを越えても、二重扉の内側にはいるだけで、外には出られないんですけれどね。
地面に飛び下りた後、
「何ですか?吾輩は何もしていませんよ?」
みたいな顔をして尻尾を振る犬がおかしいですね。
小型ながら野性的な相貌のゴンです。
縄文柴を飼っています
ゴンくんがうちの子にそっくりでほぼほぼ縄文柴で間違いないと思います。
虐待の末捨てられるなんて、
ゴンくん辛かったでしょうね。
今まで、見たサイトや、ブログの中で一番しっかりと
縄文柴についてまとめてありました!
あなた様とゴンくんの今後の幸せと健康を願っています
ありがとうございます。
お陰様でゴンは今日も元気です。
犬も猫も捨てないでほしい。
まして山に捨てるなんて、じわじわゆっくりと殺しているのと同じなんですから。