ディクソン『新恐竜』
副題:『絶滅しなかった恐竜の図鑑』。
恐竜が、6500万年前に絶滅したことは、誰でも知っている。
でも誰だって一度は空想したことがあるだろう。
もし、絶滅しなかったら?
もし恐竜たちがまだ生きていたら?
ドゥーガル・ディクソンが、『アフターマン』に続けて、またまたやってくれた。
絶滅しなかった恐竜たち。
さて、どんな姿に進化しただろうか?
ディクソンは、しかし、
生物学的な可能性の限界を超えてまで彼の空想を飛躍させようとはしない。彼が描く空想動物の物語が、SF小説や「失われた世界」、そして原始の闘争を描いたハリウッド映画のどんなものよりも優れているのは、この自己規制があるためなのだ。
(デズモンド・モリスの「序文」より)
最近は、特殊撮影技術等の発展のお陰で、とんでもない「空想生物」が、実にリアルに描かれるようになった。
が、それらの多くはあまりに奇想天外、あまりに生物学を無視しすぎで、リアルでありながら現実感を伴わないという、妙な事態に陥っている。
ディクソンの描く新恐竜たちは、最近の怪物どもほどハデではないかもしれない。
そのかわり、妙な現実感を伴っていて、つい「本当にいるかもしれない」と思ってしまうのである。
また、どうしても後半の、図鑑の絵にばかり目が行ってしまいがちが、あらためて前半の文章部分を読んでみると、これがまた真面目で面白い。
内容的にはほとんど、生物学上の常識が書いてあるだけなのだけど、うまくまとめてあるし、後半の空想世界へ巧妙に引導していて、「だからあんな風に進化したんだな」と、納得してしまうのである。
恐竜ファンには絶対に見逃せない一冊。
どうぞ楽しんでください。
※なお、私が持っている版は今は絶版。その後、ダイヤモンド社から再出版されている(疋田努:監修、土屋晶子:訳、2005/07/28出版、ISBN:9784478860502)。
(2011.10.25)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『新恐竜』
絶滅しなかった恐竜の図鑑
- 著:ドゥーガル・ディクソン Dougal Dixon
- 訳:楠田枝里子
- 出版社:太田出版
- 発行:1988年
- NDC:457.87(古生物学、化石)
- ISBN:9784900416505 (ダイヤモンド社版 9784478860502)
- 120ページ
- カラー
- 原書:”The New Dinosaurs An Alternative Evolution” c1988
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:想像上の恐竜たち