『おこまの大冒険~朧月猫の草紙』

江戸時代のベストセラー作家x世界的浮世絵師がタッグ。
山東京山・作、歌川国芳・絵。
まさに、夢の組み合わせ。
令和の世にも名を残す大人気作家と、ヨーロッパ絵画界に影響を与えたほどの絵師が、一緒になっているだけでも魅惑的なのに、この大御所二人が二人とも、大の猫好きときたもんだ!
猫好き本性をこれでもかと発揮して、艶やかに織りなす猫ねこネコの江戸奇譚。
これが面白くなくてどうする?
その、そうでなくとも面白い作品を、金子信久氏がますます面白く訳して紹介してくださいました。感謝感激、最っ高っす!

『おこまの大冒険~朧月猫の草紙』
かなり横長な装丁。高さはちょうど文庫本と同じ、そして幅は、ちょうど文庫本見開きと同じ。つまり、文庫本を2冊横にならべた大きさです。
ページ数も335ページと、多めとはいえ膨大ではないのですが、この横長なつくりが、実際より分厚い本にみせています。
なぜこんなに横長なのかといいますと、これがまた実に嬉しいデザインでありまして。

『おこまの大冒険~朧月猫の草紙』
原文・原画、原本の雰囲気まで全部ソックリ味わえる♪
(よ、読めませんけどね、私には、こんなくずし文字・・・汗)
主人公、いえ、主猫公のおこまちゃんをはじめ、多数の猫たちが登場します。

『おこまの大冒険~朧月猫の草紙』
猫たちの描かれ方がまた面白い。
あるときは、猫の姿そのまま。
あるときは、猫が着物を着ている風に、袖口からのぞく手先は猫の肉球。
そしてあるときは、猫な部分は顔だけ、手足の先までヒト風に。
現在の日本アニメ文化の栄華も、この絵をみれば納得。こんな発想の先祖を持ち、こんな作品を根っこに持つ日本アニメ、発達して当然だ!

『おこまの大冒険~朧月猫の草紙』
お話の内容も、荒唐無稽で波乱万丈、一瞬たりとも読者を飽きさせません。
一見分厚く見えますけれど、上記の通り、見開きの半分は原画、読むべき現代語訳部分は右側のページだけですし、それも1/2~2/3程度しか埋まっていなかったりと、あまり多くはないのです。ですから一気読みできます。
というか、しちゃいます。面白くて止められず、一気読み。
江戸時代の作品だなと思わせる描写は多々あります。
とくに、猫が、少しのことにも恩義を感じて、忠義礼節を尽くす部分とか。
猫が、恥や義理のためだけに自害しようとするところとか。
ネコがですよ!自由で気ままな猫たちが、ですよ!
儒教に支配された江戸時代の人たちには、これが自然な考え方だったのかもしれませんが、現代人の我々には、違和感を通り越して、ただもうコミカル(笑)。
ますます面白ろ可笑しい話にしてくれています。
さらに私が好意を感じたのは。
ここに登場する江戸時代の人たち、子猫が生まれると、ちゃんと里親を探していることです。
安易に捨てたり、嬰児猫を川流しなんてかわいそうなことはしていません。
撫子姫(人間)の良縁のきっかけとなった出来事も良いですね。
作者の猫好き度がうかがえます。
猫が好きな方、古典文学が好きな方、江戸時代に興味がある方、浮世絵など絵画が趣味な方、小説が好きな方、老若男女、み~んな楽しめる本です。
すっごいお勧め!

巻末に豪華カラーで8枚の口絵。

『おこまの大冒険~朧月猫の草紙』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『おこまの大冒険』
朧月猫の草紙
- 作:山東京山(さんとう きょうざん)
- 絵:歌川国芳(うたがわ くによし)
- 訳著:金子信久(かねこ のぶひさ)
- 出版社:パイ インターナショナル
- 発行:2013年
- NDC:913.5(日本文学)小説
- ISBN:9784756244291
- 335ページ
- カラー、白黒
- 原書:朧月猫の草紙
- 登場ニャン物:こま(尾の上)、とら、とく、くま、ゆき、はな、きじ、あま、いち、岩ぶち、荒獅子、他多数
- 登場動物:翁丸、他(犬たち)、こん吉、他(狐たち)、狸
目次(抜粋)
まえがき
初編
二編
三編
四編
五編
六編
七編
解説
参考文献
資料
コラム
猫好きの心に染み入る言葉
田金菊政のなりわい
猫の美徳
猫の美しい暮らし
おこまちゃんと、とらさんのモデル
歌舞伎とおこまちゃん