石田衣良『ブルータワー』

石田衣良『ブルータワー』

 

死亡率・約88%のインフルエンザウイルスが生物兵器に使われて!?

瀬野周司(せの・しゅうじ)は、悪性の脳腫瘍に置かされていた。余命はあと1~2ヶ月。

住居は、首都圏でも有数の超高層マンション「新宿ホワイトタワー」の最上階からひとつ下。2億円はくだらない物件だ。40代の若さでこのタワーマンションに住めるのは、遺産のお陰だった。周司の唯一の財産だ。

彼にはもう一つ、他人に自慢できるべきものがあった。美人でスタイル抜群の妻である。しかし夫婦関係は冷え切っていた。妻は、ガンに侵された夫を見限ってもう久しい。他人の前では貞淑な妻を演じ続けていたが、不倫相手もいた。

周司の頭痛はひどくなる一方だった。とうとうある日、かつてないほどの頭痛に見舞われ・・・。

気が付いたとき、周司の精神は、200年後の日本にタイムスリップしていた。

なんとそこは、高さ2kmの巨大タワーの中だった。周司は「セノ・シュー」という男で、体は健康そのもので、同じように超美人の妻を持ち、同じように最上階のひとつ下の贅沢な住居に住んでいて、そして、しかし・・・。

その搭「ブルータワー」の外は地獄だった。

22世紀の中頃に、東西大戦が勃発したのである。核兵器こそ使用されなかったが、もっと悪いものが使用された。生物兵器だ。劣勢に立たされた西中国が、ヤケクソでばらまいた開発途中のウイルス「黄魔」。爆発的な伝染力、電撃的な症状、その死亡率はなんと約88パーセント!かろうじて生き残った者にも重篤な後遺症が出てしまうという、悪魔さえ震え上がるようなウイルスである。

しかも。

黄魔は、インフルエンザの改良型だった。インフルエンザウイルスは、生物といえるかどうかもわからないほど原始的な存在である。そのため、抗原型が毎年高速で変化してしまう。ワクチンを開発しても、翌年には効かなくなる。

人類は搭に立てこもって生活するしかなくなった。外界は抗菌剤のミストで視界もきかない。

さらに、搭の中には厳しい階層社会があった。住居の高さがそのまま地位の高さをも示していた。上層階のあまりに裕福な暮らしと、最下層のあまりに貧しい暮らし。ひとつの搭の中でありながら。

当然ながら、下層階には不満が充満し、テロが頻発する。下層民の命が紙屑のように失われていく。

周司(=セノ・シュー)は、人類を救うため、絶望的な闘いを開始する!

*   *   *   *   *

長編SF冒険ファンタジーです。でも500ページをほぼ一気読みでした。面白かった~!

登場する猫たちは;

まずは周司の飼い猫、アビシニアンのココ。でもこの子は何もしません。名前が出てくる程度。

もう1頭(?)は、パーソナルAIライブリアンのココ。セノ・シューの腕に巻かれた、厚さ1mmリほどのクロームのバンドで、ネコの頭がエッチングで刻まれています。話しかけると、10cmほどのホノグラムが現れて受け答えしてくれるのですが、その姿が、黒いスーツを着た人間の体に、頭部だけがアビシニアンというもの。このAIの名前もココ。牙も、ヒゲも、何もかも、まるで本物の猫みたいに精巧な三次元映像なのです。

このココはすごいんです。

「(前略)わたしのなかには現存する人るの文字、音声、映像情報のすべてが保存されています。私はもち主の施策、意思決定、情報処理を補助するパーソナルライブリアンです。タワーでの生活を快適にする様々な機器を統括するコントローラーとしても、消滅したものを含め二千を超える言語の自動翻訳機としても機能します。血圧、脈拍、血糖値、体脂肪率など、健康状態を自動捕捉する健康管理器としても大変に有効です。」
page31

右も左もわからぬ世界に飛んだ周司にとって、ココ以上に頼もしい相棒はいません。そして、このココ、すばらしい活躍をします。機械を越えた活躍と言ってよいくらいです。

さらに。

ココだけでなく、登場するもうひとつの高級ライブリアン(性能はココより上)も、ロシアンブルーです。そして、周司が活躍する未来は2222年。ニャンニャンニャンニャンの年ですね(笑)。

と、いうことで。

本物の猫は出てこないに等しいし、ココの在り方も、生物学的な意味での猫とはかけ離れた存在ではありますが、ギリギリ「猫の小説」に分類しても許されるかな、と。

内容的には、正直、かなり無理がある感じは否めません。とはいえ、そもそも「タイムスリップ」という設定からして無理といえば無理なんですから、細かいところはエンターテインメントと割り切って、小説の面白さと、人類の愚かさを、満喫してください。

今ちょうど、中国は武漢で発生した新型コロナウィルスの流行で、武漢は閉鎖、日本をはじめ各国で罹患者が出、世界中が大騒ぎしています。
自然発生のウイルスは仕方ないとしても、せめて未来の人類が、生物兵器を使ってしまうほど愚かでないことを祈りつつ・・・ホント、頼むゼよ!!
(と、この騒動で『ブルータワー』を思い出し、あわててレビューを書いた私なのでございました (-_-;)

石田衣良『ブルータワー』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『ブルータワー』

  • 著:石田衣良(いしだ いら)
  • 出版社:株式会社 文藝春秋
  • 発行:2011年
  • NDC:913.6(日本文学)小説 長編SF
  • ISBN:9784167174194
  • 504ページ
  • 登場ニャン物:ココ
  • 登場動物:-

 

著者について

石田衣良(いしだ いら)

1997年、「池袋ウエストゲートパーク」で第36回オール読物推理小説新人賞を受賞、続編3編をくわえた『池袋ウェストパーク』でデビュー。2003年、『4TEEN』で第129回直木賞受賞。06年、『眠れぬ真珠』で第13回島清恋愛文学賞を受賞。ほかに『再生』、『6TEEN』、『チッチと子』、『坂の下の湖』、『IWGPコンプリートガイド』、『シューカツ!』など。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


ショッピングカート

 

石田衣良『ブルータワー』

5.8

猫度

3.0/10

面白さ

9.5/10

猫好きさんへお勧め度

5.0/10

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA