川崎のぼる『いなかっぺ大将』
キャット空中3回転、ニャンパラリ!どうだ、大じゃえ門!。
今でこそ「ニャンコ先生」といえば『夏目友人帳』ですが、昭和40年代の昔からつい最近まで、「ニャンコ先生」=『いなかっぺ大将』のキャット空中3回転!でした。
と、ふと思い出し、そういえば『いなかっぺ大将』はまだ書いていなかったことを思い出し、本棚を探ったら、へへへ、やっぱり持っていた☆平成6年版ってことは前世紀じゃん(笑)しかも『もーれつア太郎』『ニャロメ!!』も見つけちゃった。これも書いてなかったなあ、ニャロメという超有名人、否、超有名猫が登場するというのに。
というわけで、『いなかっぺ大将』から書きます。
昭和42~47年(1967~1972年)に、小学館の幼稚園~小学生むけの雑誌に掲載されました。昭和45年(1970年)にはテレビアニメ化。フジテレビ系列局他で約2年間放映され、イタリア等にも輸出されたそうです。
と、大人気な作品でしたから、覚えている方も大勢いらっしゃることでしょう。
主人公は「大ちゃん」こと大左ェ門。青森県のある小さな村で、じいちゃんと暮らしていました。庭には多数の動物達、犬や牛など家畜だけでなく、野生のツキノワグマやタヌキやウサギ等までいます。仲良しは隣の花ちゃん。村のガキ大将です。小学4年生。
ところがある日、亡くなった父の旧友が訪ねてきます。かねてからの約束で、大ちゃんを東京に連れていき、勉強や柔道を教えるというのです。
大ちゃんは、それまで自分が「井の中のカワズ」だったことに気づき、東京に出て「誰にも負けんような大物になってやるぞ!」と決心します。おじさんの家に居候させてもらいながら、東京の学校に通い柔道の修行に励むことになりました。
しかし、秋田の山奥しかしらなかった田舎っぺの少年にとって、東京は異次元の世界でした。昭和40年代といえば、カラーテレビが普及しはじめた頃です。都会と田舎の地域差は、今とは比べ物にならないくらい大きな時代でした。大ちゃんは東京では失敗続き。
でも柔道の才能はすばらしいものがありました。東日本小学生柔道大会で優勝し、その後もどんどん強くなります。
その大ちゃんの柔道の先生はもちろん、父の旧友のおじさんとその娘のキクですが、もうひとり、偉大な先生がいました。もう一匹、と表現すべきでしょうか。
そう、ほかならぬニャンコ先生です。四国から出てきたばかりの、「いなかもんのどろぼうネコ」です。
動物と話ができる大ちゃんは、ニャンコ先生の身軽さに驚き、頼み込んで術を教えてもらいます。その必殺技が「キャット空中3回転」。
技だけではありません。ニャンコ先生に柔道の精神も教わります。
それは、どんなときでも、
「試合は正せい堂どうとやらにゃいかんということぞなもし」
「激闘大左ェ門の巻」page225
ニャンコ先生の師匠ぶりが楽しいですねえ!試合のときは最前列で大ちゃんを応援。決勝戦では近所のドラネコ仲間をおおぜい引き連れて大騒ぎ。こんな猫に応援されたら、誰だって張り切っちゃいますよね。
それにしても、昭和の中頃って、日本人が元気だったなあと思います。良くも悪くも日本中が張り切っていたイメージですね。こんなにエネルギッシュに活動していたら、日本経済があれほど成長したのも当然でしょう。今の日本人にはとてもこんなパワーなないなあ。
ニャンコ先生が令和の小学4年生を見たら、なんというのでしょうね?
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『いなかっぺ大将』
- 著:川崎のぼる
- 出版社:株式会社日本文芸社
- 発行:1994年
- 初出:昭和40年代(1967年~)(
- NDC:726(マンガ、絵本)マンガ
- ISBN:9784537073003
- 264ページ
- モノクロ
- 登場ニャン物:ニャンコ先生、ミケコ、ほか
- 登場動物:―