映画『子猫物語』

映画『子猫物語』

 

猫の名として「チャトラン」を「たま」「みけ」並みに有名にした映画。

なんて、日本的な映画!
西洋人には決して作れない映画だと思いました。

なぜかといえば、ニンゲンが一切出てこないからです。

明治の昔にすでに、夏目漱石が『草枕』で書いています。
西洋人は、

「どこまでも世間を出る事が出来ぬのが彼らの特色である。ことに西洋の詩になると、人事が根本になるから所謂詩歌(いわゆるしいか)の純粋なるものもこの境(きょう)を解脱する事を知らぬ」

「うれしい事に東洋の詩歌はそこを解脱したものがある。採菊東籬下、悠然見南山(菊を採る東籬(とおり)のもと 悠然として南山を見る) 。只それぎりの裏に暑苦しい世の中をまるで忘れた光景が出てくる。垣の向こうに隣の娘が覗いている訳でもなければ、南山に親友が奉職している次第でもない」。

西洋人が作る動物ものは、必ずどこかに人間が出てきます。いたるところに出てきます。要らないのに出てきます。もし出てこない場合は、動物が思い切り擬人化されます。言葉を話し、演説したり争ったり、悪口を言ったり恋を囁いたり。

この『子猫物語』も、大いに擬人化されてはいます。相当に無理なシチュエーションや、あまりに人間的な行動もあります。

けれども、動物たちは喋ったりしません。まして最近のハリウッド合成みたいに、動物の口がパクパク動いたり、眉を顰めたり、笑ってウインクしたり、なんてしません!

猫と犬、それもパグという極めて人工的な犬種が主役でありながら、まったく人間が登場しない映画なんて、洋画では考えられないのではないでしょうか。

それを、こうもあっさり、ニンゲン抜きで作って大ヒットさせちゃったのだから、なんて日本的なんだろうと感心したのです。

さて。

舞台は、広大な大自然が広がる北海道の牧場。
チャトランたち7兄弟は牛小屋で産まれました。
チャトランの親友はパグ犬のプー助。

その日もプー助とかくれんぼをして遊んでいました。
ところが、チャトランが乗った木箱が川に流されてしまいます。
プー助は必死に追いかけます。

こうして、チャトランとプー助は生まれ故郷から遠く離れてしまいます。

チャトランとプー助は、出逢ったり、またはぐれたりを繰り返しながら、さまざまな冒険をします。
小鹿や子豚たちと遊んだり。
フクロウに食べ物を分けてもらったり。
クマに追いかけられたり。
カラスを追いかけたり。

やがて、チャトランは白猫に出会い、そして、恋をし・・・

大自然の映像はどこまでも美しく。 登場する動物たちは、子猫のチャトラン・子犬のプー助をはじめ、幼く綺麗な子が多く。

まるでおとぎの世界で、大ヒットしたのは、ある意味、よ~くわかります。

わかるのですが、でも・・・・

【以下、閲覧注意!ネタバレ含む】

映画『子猫物語』

映画『子猫物語』

↓   ↓   ↓   ↓   ↓

公開当初から、動物愛護家たちから、強い批判がありました。

子猫を木箱に乗せて川に流していること。
子猫を崖の上から海に飛び込ませていること。

これらの映像が、動物虐待だという批判です。
中には撮影にあたって何匹も子猫を殺しているんじゃないかと危惧する人も少なからずいたようです。
猫を知る人なら、チャトラン役が1頭ではなく、何匹もの似た猫が使われていることにも、当然気付くでしょう。

私も・・・この映画にはもやもやします。

子猫が乗った木箱が川に流されてしまう。
それだけの設定なら映画のストーリーとしてありがちな場面だし、別にどうってことないと思うのですが、

流される場面が長すぎませんか?

支流から本流まで延々と流され、その間には急流もあり、箱に水しぶきがかかります。
あんな急流に、子猫を乗せて木箱を流すなんて、そんな撮影をして良いのか?
撮影中に事故は皆無だったのか?
どの程度の安全対策をとっていたのか?

たとえ万全の対策をとっていたとしても、子猫にはどれほど恐怖だったろう!

映画『子猫物語』

映画『子猫物語』

木箱以上に怖いのが、海に落ちるシーン。

海鳥に追いかけられて、チャトランは崖の上から海に落ちます。
なんとか崖に泳ぎ着きよじ登ろうとしますが、濡れて滑りやすい岩肌に、何度もまた落ちてしまいます。

人間の俳優なら、すべて納得の上での命がけの演技であり、うまくいけば名声や高額な報酬も得られるのですから、あのくらいはするでしょう。

しかし、子猫にあんなことをさせるなんて!

しかも、そのまま崖上に無事よじ登るシーンはないんです。
落ちて、それから場面が切り替わって、広い砂場(明らかに崖とは別の海辺)にチャトランが流れ着くシーンに繋がっている。

あのシーンで最初の子猫はおぼれ死んだのではないかと、動物愛護家たちが騒いだのも無理はありません。
製作者側は、死んだ猫なんて一匹もいない、複数の子猫が使われたのは、子猫はすぐ成長しちゃうからだと主張していますし、それを信じたいのですが・・・・

ものすごく可愛くて、ものすごく綺麗で、ものすごく牧歌的な映画です。
動物達だけでなく、一面のワタスゲの原とか、大自然の映像だけでも、本当に美しいのです。
まさに、息をのむ美しさ、愛らしさ、かわいらしさです。

でも、子猫を海に落としている点で、評価は×を点けざるを得ません。
落ちた子猫は、納得して演技していたのではなく、文字通り「命がけで」這い上がろうとしていたはずです、それを思うと。

(2015.5.31.)

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『子猫物語』
副題、シリーズ名など

1986年7月12日公開
原作・脚本・監督:畑正憲
音楽監督:坂本龍一
製作:フジテレビジョン 
配給:東宝
登場動物=チャトラン(猫)、プー助(パグ犬)、白猫、母猫と子猫たち、小鹿、小熊、牛、カラス、その他多数。

 


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映画『子猫物語』

4.6

猫度

9.9/10

面白さ

3.0/10

猫好きさんへお勧め度

1.0/10

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