NHKスペシャル『恐竜VSほ乳類』
『1億5千万年の戦い』。
NHK「恐竜」プロジェクト編、小林快次監修。
2009年12月11日、新種の恐竜発見のニュースが流れた。
発見地はアメリカ南西部ニューメキシコ州。約2億1500万年前(三畳紀後期)の地層から、初期の恐竜のほぼ完全な化石が複数体見つかったそうだ。
その恐竜の名は「タワ・ホーラエ」。
タワ・ホーラエの最大の特徴は、首の骨の側面にへこみが確認されたということ。この事から、現在の鳥類が持つ「気嚢(きのう)」と同じような器官の存在を推測できる。そして、これこそが重大な発見なのである。
気嚢の存在が、なぜ重要か。
それをわかりやすく説明した本があったなと思い出した。引っ張り出して再読。そういえばこの本もまだサイトに書いていなかった。良い本なのだから、紹介しなきゃね。。
NHK「恐竜」プロジェクトチームの本である。恐竜学者の筆ではない。そのためか、通常の恐竜物とちょっと違ったアプローチだ。NHKの力と資金をバックに、情報の最先端を求めて、取材に世界中を飛び回る。写真も豊富なら、挿絵(CG)も凝っている。しかも書いているのが、コエロフィシスの化石を見て「恐竜なのに、小さいなあ」と驚くようなレベル(だった)スタッフたちだ。多少とも恐竜のことを知っている人なら、「え、コエロフィシスが大きいわけ無いじゃん!」と笑うだろうけれど、でも、おそらくこれが通常の人の感覚なんだろうなあ。
というわけで、実にわかりやすい。さすが教養番組得意のNHKだ。説明のしかた、全体の流れ、読者の興味のひきかたなど、「恐竜オタクが書いた本」とは比べものにならない洗練さだ。無駄がない。この手法はぜひ見習いたいものだ(けど、私には無理だろうなあ。才能ないもん)。
恐竜とほ乳類の違いがてんで分からない人でも、この本1冊を読めばたちどころに理解できるだろうと思う。そして前述の、恐竜に気嚢があったことが、なぜそれほど重要なのかということも。
見ているだけでも綺麗で楽しい、誰にでもおすすめできる本です。
(2009.12.12.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
NHKスペシャル『恐竜VSほ乳類』
1億5千万年の戦い
- 編:NHK「恐竜」プロジェクト
- 監修:小林快次
- 出版社:ダイヤモンド・グラフィック社
- 発行:2006年
- NDC:457.87(古生物学、化石)
- ISBN:9784478860540
- 283ページ
- カラー
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:各種恐竜たち
目次(抜粋)
プロローグ
「恐竜vsほ乳類」が意味するもの
第1章
表舞台への登場―三畳紀後期~チャンスの時代に降り立った両雄
第2章
戦いの第1ラウンド―ジュラ紀後期~恐竜たちが君臨する世界
第3章
新天地を求めて―ジュラ紀後期~逃げるように夜に進出したほ乳類
第4章
戦いの第2ラウンド―白亜紀前期~熱河生物群が教えてくれたもの
第5章
最強の恐竜vsほ乳類の新戦略―白亜紀後期~進化のレースに生き残れ!
第6章
最終ラウンド「ゴール」―1億5000万年に及ぶ戦いの終焉