見尾田瑞穂『猫がタンゴを踊るとき』

「黒ネコのタンゴ」作詞者による猫小説。
俺は二歳半の牡猫だ。人間で言えば二十五、六の生意気盛り、いっぱし世間の荒波に揉まれたつもりでいるが、飼い主のママちゃんから見れば、いつまでたっても子猫のままらしい。
と、始まる、愉快な猫小説。
猫エッセイと言っても良い分類だと思うけれど、猫がしゃべっているというフィクション性を考慮して小説に分類。
タゴサクは自己紹介通り、生意気で冒険心いっぱい、毎日元気に走り回っている。
ママちゃんはおっちょこちょいで競馬狂いの作家・作詞家。
タゴサクにはいつも赤ちゃん言葉で話しかけ、目に入れても痛くないほどのかわいがりよう。
タゴサクはそんなママちゃんに少々手を焼いている。
きくところによると、人間べったりの猫は、猫としてはダメ猫の部類に入るのだそうだ。俺は金輪際そうはなりたくない。
そこでタゴサクは、酒屋の猫・タケの弟子になった。
タケは『俺よりほんの二、三カ月ばかり早く生まれただけ』なのに『もういっぱし仕上がっている』というツワモノである。
タゴサクとタケのやんちゃペアの結成だ。
ふたりそろえば恐いものなし。
犬と対決したり、一輪何万円もする高級鉢植花に「強すぎる天然肥料」をたっぷり排出したりとあばれまわる。
そころが、そのタケに思わぬ災難がふりかかる。
ついにボス猫の座がタゴサクにまわってくる。
猫を語り手とする「猫エッセイ」は数多いけれど、また、猫と人間が会話する「童話」は多いけれど、まじめな(?)大人向け猫エッセイ?猫小説?でありながら、猫と人間が会話する作品はあまりないのではないだろうか。
その会話は楽しく、いかにも飼い主と愛猫がしそうな内容で、ほとんど違和感なく読める。
むしろ「私も私の子たちとこんなふうに言葉が通じたらよいのに」とうらやましくなる。
猫好きさんなら、きっと楽しめる一冊。
おすすめです。
なお、著者の見尾田瑞穂さんは、大ヒット曲「黒ネコのタンゴ」(1969年、歌手皆川おさむ)の作詞者です。
(2012.12.12)

見尾田瑞穂『猫がタンゴを踊るとき』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫がタンゴを踊るとき』
- 著:見尾田瑞穂(みおだ みずほ)
- 出版社:集英社文庫
- 発行:1989年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4087494268 9784087494266
- 212ページ
- 登場ニャン物:タゴサク、タケ、タマ、その他大勢
- 登場動物:-
目次(抜粋)
PART1
ママちゃんは猫じゃない/まだあるでしょ?/赤犬/タゴサク・コレクション/テエサシ/他
PART2
ブリッコ/帰ってきたイソーロー/敗者復活戦/似たもの同士/バックブラウンドミュージック/他
解説・・・串田孫一
私と猫
この本 大好きです。主人公の 猫のタゴサクと ママちゃんと、それに 登場する色んな人物が また 面白かったり 優しかったり。私も ママちゃんの おうちで イソーロー、いえ、お手伝いしてみたい!おすすめです。
コメントありがとうございます。
楽しい本ですよね!