中原一也『はけんねこ』3

はけんねこ

副題:~あなたの想い繋ぎます~ 「はけんねこ」シリーズ第3弾。

NNN=ねこねこネットワークで暗躍(?)する野良猫達。単独行動者といわれる猫が、それも、古傷目立って猫相の悪い、みるからに「野良猫」の雄たちが、仲間を救うために東奔西走。CIGAR BAR「またたび」に集まっては、ああでもない、こうでもない、さてどうしたものかと暗中模索。猫だから、それも野良猫達だから、出来る事は限られている。が、猫だからこそ、できることもある。なんといっても彼らは、自身が野良猫として、野良生活の厳しさを熟知している。子猫や病猫、老猫、完全室内飼いだった猫、そんな猫達が外では暮らせないことを、誰よりもよく知っている。

だから、他猫を助ける。助けたところで彼ら自身には何の得もないどころか、気苦労と肉体疲労と、しばしば空腹が残るだけだというのに。

うまく行くときもある。憐れな捨て猫に、理想的な家族を紹介できることもある。しかし、世の中、人間社会というものは、そう猫の思惑通りにはいかない。そもそも、ターゲットの猫をターゲットの猫好き人間と会せるだけでも一苦労だ。なんせ猫に人間の言葉は使えませんからね。

*   *   *   *

ますます大活躍のNNNメンバーが、すばらしいです。なんて頼もしい、なんて愛情深い、なんて気持ちの良い猫達!

彼らがアタフタ走り回ったり、ゾロゾロ連なって歩いていたり、藪の下に並んで隠れて首尾を見守ったり、どの姿を想像しても楽しくて顔がにやけてしまうのですが、私が一番見てみたいのは、やっぱり、「またたび」に集まってまたたびを燻らす彼らでしょうか。あるいはカウンター席で、あるいはボックス席で、今日の仕事に満足しながら、プフゥと紫煙を吐きだす。喧嘩の古傷が目立つ牡猫達。耳が千切れていたり、顎がずれていたり。そんな未去勢野良たちが、ゆったりと葉巻を燻らしている。ジャズの物悲し気な旋律をBGMに、カウンター内にはまたたび熟成のプロ、マスター猫が。

どの猫もいじらしくて、愛らしくて、思い切り抱きしめて頬ずりしたくなります。

それにしても人間って勝手だなあと、あらためて思ってしまいます。猫達はこんなに苦労しているのに。捨てるな!見過ごすな!もっとちゃんとお世話しろ!でも猫愛に満ちた人間も多く登場していて、人間だって捨てたものじゃないな、とも思ったり。

あまり詳しく内容とかレビューとか書きたくないんですよね。本当に猫が好きな人に、先入観無く読んでほしい作品だから。私はめちゃくちゃ気に入りました。最高な猫本だと思いました。それだけお伝えしておきます。

どうぞ読んでください。最初の1冊目から、この3冊目まで、3冊とも。小説ですから、読みとおすのは簡単です。途中で何回か泣くかもしれませんが、それ以上にほっこり癒されます。

猛烈にお勧めです。

はけんねこ

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

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目次(抜粋)

第一章 二つの名前
第二章 嫌われ者
第三章 帰ってくるかな
第四章 ちぎれ耳の初恋
番外編 猫神様の遣い

著者について

中原一也(なかはら かずや)

猫を侍らせながらゴリパラ見聞録を観るのが最近の楽しみです。猫が好き好き手さくらねこ活動に手を染めました。 (著者プロフィールは本著からの抜粋です。)

『はけんねこ』

あなたの想い繋ぎます

  • 著:中原一也(なかはら かずや)
  • 出版社:株式会社二見書房 二見サラ文庫
  • 発行:2021年
  • 初出:(書き下ろし)
  • NDC:913.6(日本文学)小説
  • ISBN:9784576211411
  • 250ページ
  • 登場ニャン物:ちぎれ耳、チョビ、オイル、ふくめん、タキシード、情報屋、ちゃあこ(ルル)、あんこ婆さん、漱石先生、白、他多数
  • 登場動物:-
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