中島健次『出てますか?弱酸性尿(pH6.4±0.2)』
猫の為に、自身や(人間の)家族を実験台に、尿のpHを実験!
著者の中村健次氏は、東京農工大学を卒業して獣医師になった後、農学博士号を取り、さらに科学技術庁技術士試験にも合格したという経歴の持ち主。
その中村氏は8件も特許を取得していて、そのうちのひとつが「pHスティック」という、我々猫愛好家には非常に気になる商品なのである。
健康な猫の尿が弱酸性(pH6.4±0.2)であることは、ご存じの方も多いだろう。
これがアルカリ性に傾くと、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)による尿結石症の危険性が高まる。
猫に多いストラバイトを予防するには、尿を弱酸性に保つことが最大の治療法だ。
著者は尿pHに興味を持ち、自分の体で実験してみることにした。
ネコもイヌもヒトも、理想の尿pHは同じく弱酸性(pH6.4±0.2)だからだ。
さっそく毎日毎日、朝昼晩と、ことあるごとに尿のpH測定。
ところが著者は「病的な酸性尿」という困った体質の持ち主で、なかなか理想的なpH数値が出ない。
これでは「参考程度の価値しかなさそうです。」
やむなく、30代前半の健康な娘夫婦に協力を頼み、さらに、飼い主さん達から愛犬愛猫の数値をメールしてもらったり、近所の健康な犬猫の尿pHを測定したりしてデータを集めた。
「民間の一個人のできることには限界があり、これが精一杯の努力です」とのことだが、なかなか立派なデータだと思う。
猫たちの健康に頭を痛めている我々愛猫家にとっては、とてもありがたい資料だ。
この本は「なにせ編集者のご意向が、ペットではなくヒトの健康書を出版するとのことですので、ペットのことはほどほどにしておかなくてはなりません」ということで、残念ながら大半が人間尿の話である。
とはいえ、尿pHについてこれほど詳しくわかりやすく書かれた本は、あまり無いと思う。
むしろ主な被実験対象がご本人であったからこそ、飲食の内容はもちろん、体調や運動量や疲労度、さらに細かい感情の起伏まで、正確に記録することができたのだ。
それになんといっても中村氏は獣医師である。
もともとが「ペットの健康に役立つのだから、尿を弱酸性にすることはヒトの健康にも役立つはず」と始めた人体実験だ。
犬猫たちのことも忘れてはいない。
猫飼い主も犬飼い主も、それからヒト自身も、この本は大いに役立つに違いない。
実験台になってくださった人間達に感謝。
(2006.10.1.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『題出てますか?弱酸性尿(pH6.4±0.2)』
- 著:中島健次(なかじま けんじ)
- 出版社:文芸社
- 発行:2005年
- NDC:498(医学)
- ISBN:4286006468 9784286006468
- 197ページ
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:-
目次(抜粋)
- はじめに
- 第1章 尿について、ちょっとだけ勉強しておきましょう
- 尿は体内情報の大宝庫
- 尿は体液ではありません
- その他
- 第2章 尿のpHは眼まぐるしく変動するのが正常です
- 尿pHのいわゆる「正常値」
- 尿pHの変動カーブ 特徴その一
- その他
- 第3章 尿のpHに影響を与える三大要因の一(食品)
- 酸性・アルカリ性食品は本当にあるのです
- 八十年以上も前の医学専門書に書いてあります
- その他
- 第4章 尿のpHに影響を与える三大要因の二(運動)
- 動物は動いてこそ動物なり
- 歩いてもはしても痩せない家計があります
- その他
- 第5章 尿のpHに影響を与える三大要因の三(自律神経)
- 副交感神経の作用で尿pHがアップする?
- 笑うだけで尿pHがアップすることがあります
- その他
- 第6章 通風(高尿酸血症)だと尿が酸性です
- 通風だと、どうして酸性尿が出続けるのか?
- 通風体験者の方々と交わしたメールbの一部
- その他
- 第7章 アルカリ尿を出す室内暮らしのペットたち
- パソコンが苦手の飼い主さんたちへ紙上初公開
- 室内暮らしのイヌ・ネコに多発する尿石症
- その他
- 第8章 これが特許のpHスティック
- pH試験紙とリトマス試験紙は違います
- pH試験紙の欠点
- その他
- あとがき