中島らも『とらちゃん的日常』

猫にメロメロな男のエッセイ。
中島らもさんは、ある日、木の上にいる子猫を見つけた。近くにいた青年に木に登って保護して貰う。兄弟らしき子猫も見つける。事務所に連れて帰って餌やって明け方の5時まで子猫と遊んだ。
ところが、その翌日にはもう子猫たちと別れなければならなかった。飼い主がいたのである。
らもさんは、とても耐えられない。一晩ですっかり猫に魅了されてしまった。
そんなとき雑種の子猫を3000円で売っている店があると聞き、その足でタクシーでかけつける。
そんなすったもんだの挙げ句にやってきたのがとらちゃんである。とら猫の女の子。
これがまた、実に可愛い子猫なのだ。写真が80枚も掲載されているが、どの写真も、本当に愛くるしい。
らもさんはとらちゃんにメロメロだ。
おれは猫を飼うに値しない人間だ。来し方の悪業を考えるとそう思う。
と書き、
猫を飼うことでおれは一種のみそぎをしているのではないか。
と自省する。
そんならもさんだが、それ故にますます、とらちゃんを可愛く思う。

中島らも『とらちゃん的日常』
ところが、らもさんに強敵が現れる。
事務所の大家さん、もう良いお年のご婦人なのだが、かつては12匹もの猫を飼っていたという猫使い、その大家さんが事務所の2階に住んでいる、事務所と2階は階段でつながっていて行き来自由、とらちゃんは当然のように2階へ遊びに行ってしまう。
一方のらもさんは多忙の身、やれ取材だ講演だ執筆だと全国を飛び回っている。
いつのまにか大事なとらちゃんは、大家さんの方にすっかりなつき、らもさんは煩悶することに。
とらちゃんを取り返せ!
猫エッセイは女性著者によるものが多いようですが、私は、男性の猫エッセイ、それもいい年したごつい男が猫にメロメロになっている猫エッセイが大好きです。
らもさんのとらちゃんに対する目や愛情に、何回もほほ笑まずにはいられませんでした。中島らもって結構いい奴じゃん!
今まであまり読んだことなかったけど、ほかの本も読んでみるかな。
(2005.3.28)

中島らも『とらちゃん的日常』

中島らも『とらちゃん的日常』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『とらちゃん的日常』
副題、シリーズ名など
- 著:中島らも(なかじま らも)
- 出版社:文芸春秋社/文春文庫
- 発行:2004年
- NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
- ISBN:4167585022 9784167585020
- 239ページ
- 口絵
- 登場ニャン物:とらちゃん、ミケ豊中、きんちゃん、ふくちゃん、ピッチ、ミミチャ
- 登場動物:-
【推薦:よっちー様】
らもさんが
「おれ、こんな人間なんだよ、どうしようもねえだろう・・・」
ってつぶやいている声が聞こえるような気がしました。(決して暗くはないんですよ)
らもさんが猫を愛し慈しみながらも、畏れている気持ちがよくわかります。あの大きな目になにもかも見透かされているように思っていたのかもしれません。わたしも時々そんなふうに感じることがあります。
写真がいっぱい載っていて、とらちゃんは本当に可愛い子です。
(2004.7.29)
*サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。