スウィーニー『猫とキルトと死体がひとつ』

猫だらけなコージー・ミステリー。
ジリアン・ハートはキルト作家。
猫用クッションやベッドなどを作って生活している。
10か月前に最愛の夫を亡くし、湖畔の家に引っ越してきた。
ジリアンの今の家族は、三匹の猫たちだ。
シャブリはヒマラヤン。
なんと”人間アレルギー”。
人の頭のフケでクシャミ連発となる。
メルローはメインクーン。
茶トラの男の子。
体重は9kgもあるけど、メインクーンの雄としては、太っているとはいえない。
シラーは綺麗なアビシニアン。
呼べばお返事をする、おしゃべりな男の子。
個性豊かな猫たちだが、全員に共通する事は、ハリケーン・カトリーナで被災した猫たちだということだった。
被災猫だから血統書はない。
が、ジリアンに心から愛され、どの子も美しい。
ある日、短期出張から帰宅すると、窓ガラスが割れ、シラーがいなくなっていた。
探し回ったあげく、ただ一つの可能性が残った。
まさか誘拐された?
ジリアンは慌てて警察に通報する。
とりあえず警官は来たものの、人間ならぬ猫の子が被害者と聞いて、あまり熱心に捜査してくれない。
しかしひとりの女性巡査とは気が合って、警官としてではなく友達として協力してくれそうだ。
ジリアンは、愛猫が心配で、いてもたってもいられない。
警察の忠告を無視して、自ら捜索に乗り出す。
ところが、殺人現場の第一発見者となってしまい・・・
推理小説だから、殺人なども出てくるけれど、内容的には「コージー・ミステリー」。
しかも、猫だらけ、猫好きだらけ、猫の為に熱くなる人だらけ。
熱心な猫愛護家がいる。
猫の為なら、たとえそれが見知らぬ猫だろうと、我が身の危険も顧みず、どこまでも突き進んでしまう男がいる。
もちろん、シラー探しにも全力で協力してくれるのだが、あまりに熱心すぎて、こちらが不安になるほどだ。
他にも、この町に住む人たちは、ユニークな人ばかり。
親切な私立探偵。
滅法おしゃべり好きなコーヒー店経営者。
ガラクタの中で暮らしている不用品回収業者。
いかにも怪しげな、「ピンクの館」所有者の男。
その他、その他。
主人公も女性、著者も女性、大活躍するのも女性、バイオレンスや血みどろ暴力は無し、と、内容的には女性にお勧めのミステリーだけど、もちろん男性でもたっぷり楽しめる。
猫好きな男性なら絶対に楽しめるだろう。
コタツで、あるいは飛行機や長距離電車で、ゆっくり腰かけて爽やかに読むにうってつけの、猫だらけミステリーです。
(2012.12.1.)

スウィーニー『猫とキルトと死体がひとつ』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫とキルトと死体がひとつ』
- 著:リアン・スウィーニー Leann Sweeny
- 訳:山西美都紀(やまにし みづき)
- 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
- 発行:2010年
- NDC:936(英文学)長編推理小説 アメリカ
- ISBN:9784151500220
- 495ページ
- 原書:”The cat, the quilt and the corpse” c2009
- 登場ニャン物:シャブリ、メルロー、シラー、ダヴ、チェイス、ジャヴァ、ソフィ、その他
- 登場動物:-