斉藤洋『ルドルフとイッパイアッテナ』

迷子の子猫ルドルフ、大猫イッパイアッテナに出合う。
ルドルフは、真っ黒な子猫。
小学生のリエちゃんと、リエちゃんのお父さんとお母さんと暮らしていました。
お隣のお姉さんとも仲良し。
お姉さんは、ロープウェイ会社に勤めていて、暇な時にルドルフを乗せてくれたこともあります。
山の上から眺めた故郷の町は、そりゃもう絶景!
あるときルドルフは、猫嫌いな魚屋から逃げようとして、長距離トラックの荷台に飛び乗ってしまいます。
トラックは一晩中走り、ついた場所は、大都会・東京。
ルドルフは途方にくれます。
どうしてよいかわかりません。
そんな時、野良のトラネコに出遭います。
その猫は、顔も体もデカく、態度もデカい、さらに懐もデッカイ猫でした。
まさにボス猫の器でした。
大猫は、なぜか黒い子猫を気に入ったようでした。
「ハハハ、ほんとうにへんなやつだ。おまえ、名まえはなんていうんだ。」
「ぼくはルドルフだ。あんたは?」
「おれか。おれの名まえは、いっぱいあってな。」
「えっ、『イッパイアッテナ』っていう名まえなのかい。」
「そうじゃない。『イッパイアッテナ』なんていう名まえがあるもんか。でも、おまえがそうよびたけりゃ、それでもいい。(後略)」
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イッパイアッテナは、ルドルフに、野良猫として生きていくすべをおしえてくれます。
まずは、いちばん大事なこと。
それは、人とのつきあい方。
野良猫は、絶妙な距離を保ちながら、上手に世間を渡り歩かなければなりません。
さらに、ルドルフが思いもつかなかった「キョウヨウ」の数々。
イッパイアッテナのお陰で、ルドルフは見知らぬ大都会の中で、たくましく成長していきます。
でも・・・ルドルフはいつだって・・・リエちゃんに逢いたいよう・・・

斉藤洋『ルドルフとイッパイアッテナ』
* * * * *
初本は、1987年講談社から刊行。挿絵は杉浦範茂。
当初は私は購入せず、パラパラと立ち読み。
でもその後、書店から遠い田舎に引っ越したので、見たいときにいつでも見たいと思い、結局買いました。
文庫本で買っちゃったので、残念ながら、挿絵はありません。
児童書って、文章と挿絵が一体になって存在するものという気持ちがあり、ネット注文した文庫本が届くまで、まさか絵無しとは気づかず(汗。
ちょっと失敗しました。やっぱり児童書は絵付きのほうがいいですもん。
猫児童文学界では、とても有名な作品です。
児童書コーナーは見向きもしないという方でも、『ルドルフ』の名前は聞いたことがあるのでは?
1986年度の講談社児童文学新人賞入選。
1991年、NHK教育テレビ『母と子のテレビ絵本』で放映(絵:堀口忠彦、語り:毒蝮三太夫)、2016年、劇場アニメ作品が制作されました。
第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞。
私が読んでも、児童書として、まさに傑作だと思います。
日本中の子どもたちに、ぜひ読んで欲しい作品。
面白いだけでなく、人生の教訓を、それとなく、ふんだんに含んでいます。
男としての度量や優しさ。
約束を守ること。
勉強の大切さ。
本当の勇気とは。
本当の友情とは。
最初の方は、イッパイアッテナのカッコよさばかりが目立ちますが、そんなイッパイアッテナを追っているうちに、子猫のルドルフもどんどん逞しくなっていきます。
最後にはルドルフが大活躍!
この作品はシリーズ化されています。
お子さんをお持ちの方は、ぜひ、借りて読むのではなく、買ってあげてください。
下手な「道徳の教科書」みたいなのより、よほど人生の為になると思います。

斉藤洋『ルドルフとイッパイアッテナ』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『ルドルフとイッパイアッテナ』
- 著:斉藤洋(さいとう ひろし)
- 出版社:講談社 講談社文庫
- 発行:2016年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784062934008
- 249ページ
- 登場ニャン物:ルドルフ(クロ)、イッパイアッテナ(タイガー、トラ、ステトラ、ボス、デカ、ドロ、他)、ブッチー
- 登場動物:ブルドッグ
【推薦:みやぼう様】
知っている人は知っている。知らない人は知らない。児童書とはそんなものですがこのかたのこの本は一時期テレビで「テレビ絵本?」の様な形で何度もでてきたので知っている人は多いのでは。
題名「ルドルフとイッパイアッテナ」
「ルドルフ ともだち ひとりだち」
「ルドルフといくねこくるねこ」
作者 斉藤 洋(某大学の経営学部教授)
ルドルフというやんちゃな子猫がひょんなことで飼い主の居る町から遠くの町に運ばれてしまいそこで出会ったさまざまなネコたちの元で大きな冒険、小さな冒険をしながら一端のネコになっていくお話。
こんな風に書くと任侠物みたいですがぜひとも手にとってもらいたい一冊です。
児童文学といいながら大人にもしっかりと読めるシリーズではないかと思います。
二作目の最後の方でルドルフがやっと元いた家に帰ると、自分の居た場所に見知らぬ子猫が居る。
子猫は自分の名前をルドルフと名乗り「おじさんは?」と聞いてきた時、ルドルフは自分がすでに子猫のルドルフではなく飼い主の元から姿を消して1年が過ぎていたことに気がつく。
飼い主の家を後にして仲間の町へ帰りながら、それでも1年自分の帰りを待っていてくれた元飼い主に感謝をし、もっと早く帰ることが出来たはずなのにずるずると時を伸ばしていたのは自分であるということを自覚し、それまで自分の心を支えていた大切なものを亡くしながらも大人ネコとしての自覚を育てていく場面は涙無しでは読めません。
三作目は未だ読んでいませんがルドルフがどのように成長していくのかが楽しみです。
(2004.06.09)
*サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。