佐々木倫子『動物のお医者さん』

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佐々木倫子『動物のお医者さん』

関西弁のミケと、ハスキー犬のチョビが大活躍。

大ヒットした動物マンガです。

顔は怖いけど心は優しいハスキー犬のチョビ、気が強くて喧嘩っ早い鶏のヒヨちゃん、いつも幸せそうなスナネズミたち、それから、北海道生まれなのになぜか関西弁の三毛猫ミケが活躍するマンガ。

動物たちの絵がとてもリアルです。
しかも、めちゃくちゃかわいい~~~♪
日本に漫画家の数多しといえど、これだけリアルで、これだけかわいく描ける漫画家はほかにいないのではないでしょうか。
とにかく、動物たちの絵が最高なんです。
人間よりずっと上手に(?)描かれていると思います😀。
私は、著者こそ、動物画に関しては文句なしに日本一(もしかしたら世界一?)の漫画家さんだと思っています。

ストーリーは、公輝(本当は‘まさき’と読むが、通常‘ハムテル’と呼ばれている)と、その親友二階堂が、北海道の大学の獣医学科に入学し、獣医を目指すお話です。

主人公のハムテルと、同じく主人公格の犬のチョビがもっとも平凡で無個性な登場人物です。
ハムテルとチョビ以外は、人も動物も、皆きわめて個性的であくが強く、変な人(や動物)ばかり。

猫のミケちゃんも個性的です。
いつも首に赤いリボンを巻いたおしゃれさんですが、気が強くてわがままで姉御肌。
大きなハスキー犬を顎で使う凶暴猫です。
でも美人で、見かけによらず(?)面倒見が良く、いかにも猫って感じの猫です。

ミケちゃんよりすさまじいのが鶏のヒヨちゃんで、誰彼構わず追いかけ回し、跳び蹴りをくわせる「最強の生き物」です。
ヒヨちゃんが庭にいるときは誰も外に出られません。

舞台は北海道の獣医学科ですから、他にもいろいろな動物が出てきます。
どの子もマンガとは思えないほど正確で、愛くるしい!
特に特徴的なのがその目です。どの子もすごく生き生きしてて、確かに「生きて」います。
エゾモモンガの子達のこぼれんばかりのお目々や、スナネズミ達の眠そうで幸せそうなお目々。
また、怒っている表情さえ、作者の動物に対する愛情が感じられて、なんとも気持ち良い。
怖い顔のハスキー犬がそろった犬ぞりチームの、なんともほんわかと暖かい雰囲気は、佐々木倫子さんならではの絵でしょう。

他にも牛や馬など大型家畜から、合鴨の孵卵まで、とにかく動物まみれのマンガです。

ここまで動物たちが可愛いと、人間が出てくるのがもったいないくらいです。
人間は要りません(汗)、動物だけ描いて、と、言いたくなってしまいます。
きっと作者も、動物を描いている時の方が楽しいのではないでしょうか。
どうもそんな気がします。

動物好きな人には絶対お勧め。
少女マンガが苦手な人でも、動物好きなら、絵を見るだけで楽しめるでしょう。

佐々木倫子『動物のお医者さん』

佐々木倫子『動物のお医者さん』

ところで、・・・

10数年前に、シベリアン・ハスキーが大流行しました。
その原因をこのマンガだという人が多くいます。

このマンガの大ヒットがハスキー流行の一因となったことは否めないでしょう。
ですが、私はそれだけが原因だとは、とても思えないのです。

というのも、ハスキーを欲しがった人々と、「花とゆめ」のような少女コミックの愛読者とが同じ層の人々とは思えないからです。

当時の日本経済は、バブル景気に沸いていました。男達は給料は永遠に増え続けると信じ、不動産の値段が信じられないほど高騰しました。高級ブランド品が飛ぶように売れ、子供までがブランド品を欲しがりました。
また、それまでは転職=落ちこぼれのように思われていたのが、優秀な人材はどんどんヘッドハンティングされるようになり、特に金融業では、外資系にヘッドハンティングされることが能力の証明のように思われるようになりました。

人々が、力とお金とブランド名を異常なまでに欲しがった時代でした。

ところが1990年にバブルがはじけました。
明るい未来にかげりが差しました。

すると一大アウトドアブームがおこりました。
お金や権力より、「自然が一番さ」というわけです。
男たちの関心は、それまでのファッショナブルなスキーから、お金がかからないキャンプや釣りに移りました。
4輪駆動車が目立つようになりました。
あの楚々とした日本的美人・吉永小百合さんまでが、パラグライダーで空を飛んで見せたりしました。
そしてテレビではムツゴロウさんの動物王国が繰り返し放映されました。犬ぞりチームの話も何回も放映されました。

佐々木倫子『動物のお医者さん』

佐々木倫子『動物のお医者さん』

『動物のお医者さん』が連載されたのは、1989年から93年まで、ちょうどバブル絶頂期から崩壊期をまたぐ形です。

ハスキーはオオカミのような外見をした、見るからに強そうでカッコイイ犬です。
いかにも権力志向の男達が好みそうです。
高級車や超高級腕時計と同じく、ステータスシンボルとしてもってこいの姿なのです。

そして、バブルは崩壊しました。

いまだ夢を見続けたい男達、強さや権力に強い未練を残した男達、その一方で空前のアウトドアブーム、山へ迷彩服で入るような素人達(本来の山屋は決してそんなことはしません)、人々のとってつけたような「野生味」への憧れ、それらがすべてが重なって、あのハスキー大流行がもたらされたのだと、私は考えています。
「花とゆめ」コミックを読みふけるような少女達ではなく、バブルに踊らされ方向を見失った男達がハスキーを欲しがったのだと思うのです。
ハスキーにはそれだけのブランド力があったのです。

しかし、結果はご存じの通り。
ハスキーのような犬を日本の都市型マンションで飼えるはずがないんです。
ブームはあっというまに去り、日本中の保健所にハスキーがあふれました。

最近はチワワやロングヘアダックスなどが流行していますが、どうか変な流行に惑わされないでくださいね。
犬猫と暮らせる準備が整った人は、どうか、まず里親募集の子達の中からパートナーを探してください。
どうかどうか、お願いします。
ぜひ、里親募集の子たちの中から、犬や猫を迎えてあげてください。

(2006.6.12)

佐々木倫子『動物のお医者さん』

佐々木倫子『動物のお医者さん』この巻だけは単行本でも持っています(古本屋で買ったけど)。だって、ミケちゃんがかわいいんだもん♪

佐々木倫子『動物のお医者さん』

「いたいけなころのミケ」もう最高!

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

『動物のお医者さん』
全8巻(文庫版)

  • 著:佐々木倫子(ささき のりこ)
  • 出版社:白泉社
  • 発行:1995年(第1巻)~
  • NDC:726(マンガ、絵本)
  • ISBN:4592881419 9784592881414(第1巻)
  • 登場ニャン物:ミケ、フクちゃん、にゃおん
  • 登場動物:チョビ(ハスキー犬)、ヒヨちゃん(ニワトリ)、スナネズミたち、他多数


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