笙野頼子『東京妖怪浮遊』
なんとも独特な雰囲気の小説。
東京に出てきて自由業の一人暮らし、女も40になると「妖怪」に変化してしまうそうな。
主人公は単身妖怪ヨソメ。売れない作家。
ヨソメの同居家族は一見普通の猫・ドラ。でもこの猫、実は触感妖怪スリコ。その特徴は、異様なほどのスリスリ攻撃だ。しかも、ワープロを使って日本語の文章を書く。
「かまてっよっねーい」等と書いているうちはまだ可愛い。
「吾輩は猫である」から文章を引用したり、ヨソメの書いた物を消去して意味不明の言葉を羅列したり・・・
ストーリー全体が異様な雰囲気に囲まれている。
何もしない、ただ嫌々流されていくだけ、といった感じの中年女作家と、東京という大都会にあふれる妖怪達。
正直言って、私にはこの本は全然つまらなかった。
何度も途中で放り出そうと思ったほどだ(私は滅多に読み始めた本を放り出さない)。
しかし、一部のマニアにとっては、おそらくこの雰囲気は麻薬的効果があるに違いないと思われる。
それどころか、私だって、その時の精神状態如何では、あるいは夢中になるかもしれない。
猫達のおかげで毎日平静な精神を保っていられるから、今はこの本を受け付けられないけれど、もし、猫がいず、都会の真ん中で明日の収入も分からぬ日々を送っていたら絶対とりつかれる・・・
面白さの評価が低い本はこのリストにくわえないことにしているが、しかし、上記の理由と、「でも映像化したら面白そう」という思いと、それから、まあなんといっても岩波の本だし、という贔屓目とで、猫本リストにくわえることにした。
(2002.4.10)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『東京妖怪浮遊』
- 著:笙野頼子 (しょうの よりこ)
- 出版社:岩波書店
- 発行:1998年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4000241087 9784000241083
- 213ページ
- 登場ニャン物:ドラ(触感妖怪スリコ)
- 登場動物:-
目次(抜粋)
- 東京すらりんぴょん
- 東京妖怪浮遊
- 単身妖怪・ヨソメ
- 触感妖怪・スリコ
- 団塊妖怪・空母幻
- 抱擁妖怪・さとる
- 女流妖怪・裏真杉
- 首都圏妖怪・エデ鬼その他