書評:吉田修一『怒り』上・下

怒り

 

身元不明の3人の男たちの中に、凶悪犯がいる。

不気味な殺人事件だった。若い夫婦が自宅で惨殺されただけでない。犯人は、死体をまたいでシャワーを浴び、被害者宅で冷蔵庫をあさって食事をし、さらに壁に「怒」という血文字を残していったのだ。

犯人の身元はすぐに割れた。山神一也、27歳。顔写真が全国に公開され、マスコミも連日のように報道し、すぐに捕まるだろうと思われた。なのに、杳として行方不明。警察は、変装した顔写真も作った。犯人は整形手術をしていた。警察は病院を突き止め、手術後の写真も配布された。それでも、1年たってもまだ捕まらない。

その一方。

三人の男が現れた。

一人は、千葉の港町。一人は、東京の中心部。最後の一人は、沖縄の離島。

どの男も、見るからに凶悪な殺人犯、なんて雰囲気ではない。顔も特に似ているわけではない。

が、どの男も、ある日突然、どこからともなく現れたよそ者である。どの男も、なんらかの事情で過去を隠していた。そしてどの男も、犯人と同じ特徴を一部持っていた。

果たして犯人はこの三人の中にいるのか?

三人の男たちと、男たちをめぐる三つの愛の形。そして、衝撃の最後。

映画化されたときのキャッチフレーズは、
「愛した人は、殺人犯なのか?」
「あなたを信じたい」

と、ストーリーの紹介はここまでにして。

怒り

映画化後、新しいカバーが上にかぶせられていた

猫がちょこちょこ出てくる。

担当の刑事が老猫を飼っている。保護したとき、推定年齢15歳以上。もう長くはないといわれたものの、まだなんとか生きている。名前はついていない。

その猫以外は、背景にちらりと出てくるだけだ。外を眺めていたら、猫が道を横切ったり。港に上陸すると、波止場に野良猫達がたたずんでいたり。そこに猫を出す必然性は全く無い。犬でも、スズメでも、チューリップでも、松の木でもかわまわない。また、何も無くてもかまわない一文。

なのに、繰り返し、猫がでてくる。猫にチラ見されているようで、私のような猫好きには楽しい。

猫が目的で読む本ではないけれど、猫もミステリーも好きな人なら、楽しめる作品だと思う。
(映画はまだ見ていません。)

怒り

カバーの裏には映画製作裏話。ファンには嬉しいかも。

(2017.02.18.)

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『怒り』
上・下

  • 著:吉田修一(よしだ しゅういち)
  • 訳:姓名(ひらがな)
  • 出版社 : 中央公論新社 中公文庫
  • 発行年 : 2016年1月25日
  • NDC : 4913.6(日本文学) 長編推理小説
  • ISBN : 9784122062139、9784122062146
  • 310ページ、279ページ
  • 登場ニャン物 : 無名

 

 

著者について

吉田修一 (よしだ しゅういち)

一九六八年長崎県生まれ。九七年、「最後の息子」で文學界新人賞を受賞、作家デビュー。二〇〇二年『パレード』で山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で芥川賞、一〇年『横道世之介』で柴田錬三郎賞を受賞。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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吉田修一『怒り』

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吉田修一『怒り』
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猫度

1/10

    面白さ

    6/10

      おすすめ度

      7/10

        Pros

        • 3つの小説を同時に読んでいるようでちょっとお得感(笑)

        Cons

        • 最後まで読んでも動機がわからなかった。その辺をもうすこしつめてほしかったなあ。

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