芦川淳一『猫の匂いのする侍』
『おいらか俊作江戸綴り』シリーズ。
「猫の匂いのする侍」は、『おいらか俊作江戸綴りシリーズ』の中の一編。
俊作は数えで二十一歳、見るからに育ちの良さそうな若侍である。思いも寄らぬ事件の濡れ衣で、突然藩を放逐され、今は江戸で浪人の身だ。求職中だが、なかなか定職につけず、用心棒や便利屋ごとき日雇いの仕事を引き受けては手間賃を稼いでいる。
その俊作の今日の仕事は「迷子猫探し」。
トラや、トラや、と、町をうろついていたら、ある浪人に出会った。その浪人、妻の薬代もない貧乏人だが、その志はあくまで清廉高潔、猫のように誇り高く、猫のように素早い身のこなし、しかも、猫の扱いがうまい(笑)。
こんな快男児、今や絶滅危惧種、いや、すでに絶滅したかもしれないなあ。
気楽に読める時代小説。第一章、第二章・・・と付されているけれど、各章はそれぞれ完結した小作品といってよいでしょう。なお、猫が出てくるのは表題の作品だけです。
(2009.6.3.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫の匂いのする侍』
おいらか俊作江戸綴り
- 著:芦川淳一(あしかわ じゅんいち)
- 出版社:双葉社 双葉文庫
- 発行:2009年
- NDC:913.6(日本文学)時代小説
- ISBN:9784575663709
- 311ページ
- 登場ニャン物:トラ
- 登場動物:-
目次(抜粋)
第一章 朝の光
第二章 隻眼の犬
第三章 かどわかし
第四章 猫の匂いのする侍
第五章 小侍の仇討ち