リリアン・J・ブラウン『猫は鳥を見つめる』

クィラランと猫たち、リンゴ貯蔵用納屋を住居用に改築、引っ越す。
一方、彼の劇場ではシェイクスピアの「ヘンリー八世」が大成功をおさめていた。
この劇場は、『猫は郵便配達をする』の最後で焼け落ちてしまった旧K屋敷を、劇場に再建したものである。
町の演劇クラブは大喜び。
クィラランへの感謝と、新居への好奇心引っ越し祝いを表明しに、全員で元納屋に押し掛けどんちゃん騒ぎ。
しかし、そこで事件が。
庭で殺害された死体を発見。
続けて、新居内でも人が死んだ、・・・あるいは、殺された?
ピカックス市は、”りんご園事件”の話題で持ち切り。
(事件前から計画されていた)納屋の一般公開日には、5ドルという安くない入場料が設定されていたにもかかわらず、市民の半分が押し掛けた。
大富豪の新居と、殺人事件の現場を、自分の目で見たいがために。
クィラランは、しかし、そんな人混みにもまれたくあい。
公開日の日には、60マイル離れた市”ロックマスター”へと、ピカックス市を逃げ出した。
そこで行われる馬の障害物競走を見るためと、プロカメラマンに猫たちのい写真を撮ってもらうため、それから、ついでに(?)、ある人物について調べたいことがあったので。
ロックマスターに着くとすぐに、クィラランは不審な人物を見つける。
猫たちも奇妙な行動を繰り返す。
さて、事件の真相は?
*****
で、また・・・
『猫は幽霊と話す』のレビューで、著者のブラウン氏はアイリス・コブに冷たすぎないかと書きましたが、今回は、彼女の一人息子も死んでしまいました。
まだ若かったのに。
なんだか、ますます哀れなアイリス・コブ。
そして、またまた、・・・
クィラランの住居内で、人が殺されます。
毎回、彼は死体と一緒に生活しているようなものですね。
彼の新居を訪れる人たちも、平気で「ここで人が・・・」と談笑します。
すごい神経・・・(汗)
この作品の原題は”The Cat Who Knew A Cardinal”。
このCardinalという英単語には、枢機卿という意味のほか、ショウジョウコウカンチョウという鳥の名でもあることを、今回初めて知りました。
ついでにショウジョウコウカンチョウ(ショウジョウ紅冠鳥)という鳥も、今回初めて知りました・・・鳥類に関しては全く無知な私(恥)。
タイトル通り、猫のココは、庭のショウジョウコウカンチョウだけでなく、枢機卿をも観察していたのでした。
シェイクスピア劇”ヘンリー八世”で、枢機卿役をやった俳優を。
さらに、障害物競走で優勝した馬の名は”枢機卿の息子”号でした。
その馬を所有していた牧場主は、クィラランに、牧場の販売を持ちかけてもいました。
お金は無きゃ困るが、あり過ぎても困るようですねえ?
大富豪クィラランの周りには、彼の意図とは関係なく、人も犯罪も集まってくるようです。
しかし、猫たちは、やっぱり、飼い主が大金持ちの方が幸せかも。
広い住居、贅沢な食べ物、そして何より、暇な飼い主が、猫たちをちやほやしてくれる!
だって生活のために働く必要がないんですもん。
一日中、猫たちと遊んでいることも可能なご身分って、いいですよねえ?
50代で恰幅の良い男が、猫たちのために、シャボン玉を飛ばしたり、本を読んであげたり。
リンゴ納屋を改造した新居は、もちろん、猫たちのためのデザインが随所にあふれた、すてきな空間なのでした。

ブラウン『猫は鳥を見つめる』
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫は鳥を見つめる』
『猫は・・・』シャム猫ココシリーズ
- 著:リリアン・J・ブラウン Lilian Jackson Braun
- 訳:羽田詩津子(はた しづこ)
- 出版社:早川書房 ハヤカワ文庫
- 発行:1995年
- NDC:933(英文学)アメリカ長編小説
- ISBN:4150772118 9784150772116
- 318ページ
- 原書:”The Cat Who Knew A Cardinal” c1991
- 登場ニャン物:ココ(カウ・コウ=クン)、ヤムヤム、ティプシー
- 登場動物:ショウジョウ紅冠鳥