フォーグル『猫の気も知らないで』

フォーグル『猫の気も知らないで』

 

『猫からヒトへの92の質問』。

この本は、副題の通り、猫からヒトへの質問という形をとっている。

ヒトはどのくらい猫の言葉を理解しているのだろうか、とか、なぜ女の人の方がよく世話を焼いてくれるのか、なぜヒトは猫を見つめるのか、ワタシが家出をしたら飼い主は取り乱すかしら、ヒトはなぜすぐキスしたがるのか、などの疑問を、わかりやすく説明している。なるべく猫の視野に立って、猫にとっては理解しがたいヒトの行動を解説しようという本だ。

西洋人的だと思ったのは、33番目の質問に対する次のような解答だ。

最近まで、猫には心や感情はないって、人間に考えられていたんだ。いまもなお、多くのヒトが猫に感情があることを理解できないでいる。猫の示す反応はすべて本能によるもので、進化の過程で脳にインプットされた反射行動だって考えたがっているんだ。猫はオートマチックの機械のようなもので、ほとんど、考えたり感じたりすることなく行動していると思っているのさ。・・・猫はリラックスするために使われる消耗品で、たんにお金を払えば買える品物とみなされる。・・・
page78

日本人には、多分、こういう思想はあまりなじみのないものだ思う。むしろ、猫どころか、植物や人形や道具にまで感情を見つけたがるのが、日本人ではないだろうか。
西洋ではニンゲン崇拝のあまり、身近な犬猫の精神活動さえも完全否定していた時代が長いが、日本では猫は、物体としての肉体以上に、その精神というか霊というものに強い関心を持たれていたように思う。でなければ、あれほど多くの化け猫伝説は産まれないだろう。
猫に意志があるのは当然で、しかし犬と違って何を考えているのかわからない、だから気味が悪いと思われていたように思う。
それにしても、これほど感情豊かにみえる猫に「精神活動はない」と決めつけられる西洋人の精神構造こそ、私にはまったく理解不能である。

・・・この例以外にも、西洋的発想だなあと思われる場所が所々あった。

この本は、猫の生態や飼い方について描かれた本とはいえない。
たとえて言えば、海外旅行の本棚に並んでいる「イギリス人との付き合い方」のような本だろうか。この場合、猫が我々日本人、ヒトがイギリス人。そして、我々日本人がイギリス人について尋ねている。
「日本人はイギリス人にどう思われているの?」「どうしてイギリス人男性は、知らない女性でもドアを開けてくれるの?日本人男性はそんなことしないのに」

笑っちゃったのは、質問4で、どうして女の人の方がワタシ(=猫)たちの世話をよくしてくれるのかという問いに対し、フォーグル先生の答えは;

おそらく、女性の方が男性よりずっと「まとも」だという単純な理由からだろう。
page18

また、私がへえと思ったのは、89番目の質問「安心して暮らしたいわ。どの国に行くべきかしらね」に対する答え。アメリカかカナダ、中でもカリフォルニアを最高な場所だろうと答えている。
続いて、

もうひとつ、十分検討にあたいする国をあげておこう。それは日本だ。
age199

その理由として、日本では、

ヨーロッパとは違って、宗教上の理由から猫を嫌悪するような制度がしかれたことはない。それどころか、ほとんどいつの時代でも、猫は人間から敬われていた。
page199

アメリカ、イギリス、カナダでは、猫がもっとも人気の高いペットなんだよ。きっと日本でもそうなるだろうさ。
page200*

日本が猫飼育の場として高い評価を得ていることにとまどいを感じずにはいられない。フォーグル先生はどれだけ日本の実態をご存じなのだろうかと疑いたくなる。世界的に見れば、悪い方では決してないとは思っているものの、捨て猫の多さや保健所での殺処分数のすさまじさをみれば、とても威張れたものではない。

一日も早く、日本が、先生の評価を正当なものとして誇れるような国になってほしい。

なお、フォーグル先生は獣医学博士で英国獣医師会会員、「デイリー・テレグラフ」紙の常連コラムニスト、著書多数。

(2003.04.05)

フォーグル『猫の気も知らないで』

フォーグル『猫の気も知らないで』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『猫の気も知らないで』
猫からヒトへの92の質問

  • 著:ブルース・フォーグル Bruce Fogle
  • 訳:能勢理子
  • 出版社:ペットライフ社
  • 発行:1999年
  • NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
  • ISBN:4938396467 9784938396466
  • 206ページ
  • 原書:”The secret lif of cat owners” c1997
  • 登場ニャン物:-
  • 登場動物:-

 

目次(抜粋)

  1. 飼い主の本能を探る
    ワタシの行動の意味を、人間はぜんぜん理解していないのね。それなのに、いそいそと猫をペットにするなんてね
  2. 飼い主の感情を分析する
    ワタシが好きだと言った次の日に、ポイッと捨てる人間の気まぐれな感情。その深層心理には何があるの?
  3. 飼い主の弱点をつく
    君のためだ、とワタシの爪を抜く。映画に出しては、猫を悪役に仕立てる。「人間の都合」がどこからくるのか、暴いてやるわ
  4. 飼い主と猫の健康相談
    ワタシは飼い主といるとかゆくなるの。じつのところ、人間こそがワタシに害を及ぼしていて、猫は人間の健康に貢献しているのよ
  5. 飼い主と猫との昔、いま、未来
    もうすぐペット界の女王の座につくワタシ。宗教や習慣によって毛嫌いされてきた歴史は、本当に終わりを迎えるのかしら?

 

著者について

ブルース・フォーグル Bruce Fogle

獣医学博士。英国獣医師会会員。ロンドンで動物病院を開業するかたわら、世界各地の獣医科大学で動物行動学に関する講義を行う。また「デイリー・テレグラフ」紙の常連コラムニストとしても活躍。ペットと飼い主のかかわりについての著書が多数ある。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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フォーグル『猫の気も知らないで』

8.9

猫度

9.5/10

面白さ

8.5/10

情報度

9.0/10

猫好きさんへお勧め度

8.5/10

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