深谷かほる『夜廻り猫』1〜2
手塚治虫文化賞受賞!ほっこり、しんみり、8コマ漫画。
強面の野良猫・遠藤平蔵は、夜になると、町を廻る。
頭には冠のように猫缶をのせ、縦じまの半纏をまとって。この半纏は、彼を「野良ちゃん」と呼ぶある優しい家族が、彼の為に作ってくれたものだ。
「泣くくこはいねが~
泣いているこはいねが~んっ
涙の匂い・・・」
そして、人語で話しかける。
「もし、おまいさん、泣いておったな?」
たとえ、その相手が涙を流していなくても、
「いや、心で泣いておった」
なぜ泣いているのか、わけを話してみろ、というのだ。
問いかけられた相手は、猫が人語を操ることに、なぜか疑問は持たないようだ。変な猫だと思いつつ、とはいえ、なんせ猫なので警戒することもなく、心中を素直に吐露する。
泣いている理由は様々だ。他愛もないことの場合も多い。深刻な悩みのこともある。
夜廻り猫は、あまり助けになるようなことはできない。猫にできることなんて、限られているから。たいていは、ただ話を聞いてあげるだけである。それだけで、人間は、また上を向くことができるようになったりする。
すると猫は
「にっこり」
と言う。
人間の男『なんで「にっこり」くちで言うの?』
夜廻り猫『このかおではにっこりに見えないかもと・・・・』
17話 第1巻 ISBN : 9784063378597 p.041
ときにはこの「にっこり」が通じない場合もあるけれど。
笑えぬときはの こう言えばよい 「にっこり」 くちで言うの 「にっこり」
・・・
また怒られちゃった。(ぐうう←空腹でお腹が鳴る音)
22話 第1巻 ISBN : 9784063378597 p.051
不思議なことに、人語が使えるのは、悩みがある人間の、悩みを聞いてあげているときだけのようだ。だから、ごはんをくれる人とか、やさしくしてくれる人には、にゃあとしか言えない。あるいは、わざと、人語を話さないようにしているのかもしれないけれど。
夜廻り猫は、子猫を連れている。その子猫、重郎は、片目が開かない。
目にハンディをもっているところといい、明るい頑張り屋さんなところと言い、うちのくるるんに似ている。くるるんとちがって、開いている方の目はちゃんと見えているのが救いだけど。
でも、この子も野良である。遠藤と一緒に夜廻りして歩いている。まだ幼くて「にっこり」を「にっこい」と発音する。重郎という名前は、猫の長老から譲り受けた。
心が疲れたとき、嫌なことが続いた時などに、特におすすめしたいマンガ。
ゆっくり読んで、そして、あなたも「にっこり」と言って笑ってください。
(2017年5月22日)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『夜廻り猫』第1巻~第2巻
「モーイング公式サイト モアイ (講談社)」で連載中(2017/9/25現在)
- 著:深谷かほる(ふかや かほる)
- 出版社 : 講談社
- 発行年 : 2017年3月23日 第1巻発行
- NDC : 726 (マンガ)
- ISBN : 9784063378597(第1巻)、9784063378603(第2巻)
- 登場ニャン物 : 遠藤平蔵(野良ちゃん)、重郎、ニイ、モネ、ラミー、その他多数
- 登場動物 : 犬、タヌキ、アオハズク、他
やはり既にお持ちだったのですね!
深谷さんのまんがはこれ以前のものも好きだったのですが、
この漫画は胸の深いところにしみます。
外猫の哀しみもちゃんと知ってる人ですね。
「にっこい」たまらんいとしさです。
実際に、外猫さんに慰められ、時には生きる力をもらった人って、相当数実在すると思うのですよね。
あながち架空の設定とは思えません。