生藤由美『ゾッチャの日常』

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生藤由美『ゾッチャの日常』

 

自由奔放に見える猫たちの、喜びと悲しみ。

猫マンガには2種類あると思う。
作者が大の猫好きな猫マンガと、作者が別に猫好きではない猫マンガ。
これは多分そのまま、猫の絵がうまい(魅力的な)猫マンガと、猫の絵が下手(魅力的でない)猫マンガに分けられるのだろう、とも考えている。

どれほど精密にかつ正確に描かれてあっても、全然かわいくない(魅力的でない)猫の絵というのがある。猫が死んでいるのである。体が硬く、目が模様の一部のようで、足は地面を踏みしめていない。素人が描いた絵ならともかく、漫画家として食っていけるだけの描写技術がある人が、つまらない猫絵を描いているのを見ると、ああこの人は猫嫌いだなと思ってしまう。

また 猫嫌いな人ほど、なぜか写実的な猫を描く傾向があるように思う。猫を知らないから写生するほかないのだろう。ところがそういう絵に限って、ただ普通に歩いている構図でも、どこかしら不自然だったりする。あるいは無理に擬人化してある。

逆に、どれほどデフォルメされていても、魅力的な猫の絵がある。活きている。ポーズなど一見荒唐無稽なようでいて、なぜか不自然さがない。明らかに猫を‘知っている’。擬人化されているのに、誰が見ても‘猫’な猫マンガ。
そういう漫画家が描いた猫マンガなら安心して見られる。

そして、私が一番好きなのは、絵はかなり写実的なのに、実に生き生きと魅力的な猫を描いたマンガだ。そういうマンガは思いの外少ない。猫さえ魅力的なら、私のことだからストーリーなんかどうでもよい(勿論ストーリーも面白ければ言うこと無しだが)。

生藤由美『ゾッチャの日常』

生藤由美『ゾッチャの日常』

さて。
私は普段はあまりマンガは買わない。

しかし この「ゾッチャ」は店頭で中身をパラリと見てすぐ買ってしまった。

猫たちがすばらしく魅力的に描かれている。どの子も生き生きしていて、どのポーズも、どの行動も「ある、ある!」と拍手したくなるほどだ。
絵は写実的で、しかもかわいい。
写実的且つ可愛い絵というのはプロの漫画家でもめったにお目にかかれるものではない。

さらに脇役たちがまた最高なのだ。個性的で、楽しくて。

特におもしろいのがブスでデブ猫のブラボーちゃん。「ホワッツ・マイケル」のニャジラを一回り小さくして性格をとびきり良くしたような子なのだが、もしこんな子がうちにいたら、もう最高にかわいいだろうなっ☆ 美人猫という設定のとら子より、ずっとずっと魅力的。

多分生藤さん自身も、とら子のようなとりすました美人猫より、ブラボーちゃんの方が好きなんじゃないだろうか。こまかな目の表情など、ブラボーちゃんの方が生き生きしているように思える。

と、とても楽しくてほのぼのしたマンガなのだが、良く読めばストーリーは厳しい部分もある。

ゾッチャは飼い主の人間に翻弄される。引っ越し、旅行、そして転勤。最初の飼い主も身勝手だったが、次の飼い主はさらに身勝手だ。

人間の都合だけで作られた社会や、近代化された都市で生活しなければならない猫たちの苦労や状況についてもちゃんと描かれているから、ぜひ読み取ってほしい。
気楽に見えるゾッチャたち猫だって、苦労は絶えないのである。

PS.ゾッチャに限らず、猫マンガはおそらくストーリー展開の理由から外出自由猫が多いけど、あなたの愛猫は完全室内飼い(完全敷地内飼い)してくださいね!

(2006.4.16)

生藤由美『ゾッチャの日常』

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生藤由美『ゾッチャの日常』

生藤由美『ゾッチャの日常』

生藤由美『ゾッチャの日常』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『ゾッチャの日常』

  • 著:生藤由美(いけふじ ゆみ)
  • 出版社:集英社・マーガレットコミックス
  • 発行:1999年(第1巻)~
  • NDC:726(マンガ、絵本)
  • ISBN:9784088470733(第1巻)
  • 登場ニャン物:ゾッチャ(白猫 アタマとしっぽにトラ模様)・とら子・おやっさん・ブラボー・中浦ロシアン・等など
  • 登場動物:犬、ほか

 


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生藤由美『ゾッチャの日常』” に対して1件のコメントがあります。

  1. nekohon より:

    【推薦:きな様】

    ゾッチャ(某航空会社のキャンペーンCMから命名)は「自由猫」と書いて「あそびにゃん」とルビがふってある外出自由な飼い猫です。

    彼や、彼をとりまく人間や猫仲間たちに起こる様々な出来事を、生き生きと楽しく描いたまんがです。・・・と、普通ならば紹介されるのでしょうが、読んでいると現代の猫事情が 浮かび上がってきます。

    それは飼い猫といえど 決してお気楽なものではなく、実は相当にハードなものであることが、猫の視点から描いてあります。

    ゾッチャを始めとする猫たちは みな表情豊かに描かれており、しぐさも「ある ある~」と叫んでしまうほどリアルです。(はっきり言って人間より猫の絵のほうが ずっと上手いです^^;)

    でも・・・これがほのぼのギャグまんがとして楽しまれるだけだとしたら、猫好きとしてはつらいです。
    (2004.01.21)

    *サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。

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