シュテュンプケ『鼻行類』
副題:新しく発見された哺乳類の構造と生活。
まず最初に断っておきます。
鼻行類などという生物は存在しません!
このことをしっかり頭に入れてからこの本をお読み下さい。
そうしないと、あなたは必ず混乱し、すっかり騙されて、ついには「トリビ○」に “鼻で歩く哺乳類がいます” と、おおまじめな葉書を送ってしまうことになるでしょう。
そのくらい、この本はうまくできています。
最高傑作だと私は思います。
本によれば、
・・・1941年にハイアイアイ群島が発見され、そこにいた非常に珍しい動物達も発見された。
鼻で歩く哺乳類、鼻行類(正確には鼻行目)である。
が、その後、まったく秘密裡におこなわれた核実験のせいで、ハイアイアイ群島全体が海面下に没してしまった。
もちろん鼻行類も絶滅してしまった。・・・
のだそうです。
存在しない生物を扱っているという一点を除けば、この本は、非常に厳格で精密で格調高い、堂々たる生物学専門書であります。
画は緻密で正確、説明文は詳細で学術的、骨格図や筋肉・内蔵などの解剖図、数ページに渡る参考文献表などまであるのですから、どうみても、がちがちの専門書のように見えます。
ふざけたところは1箇所もありません。
最初から最後まで、お堅い学者のお堅い研究書です。
その上、訳者の日高敏隆氏といえば、世に知られた動物学者。
さらにこの本には「鼻行類は実在しません」という言葉はどこにも書いてありません。
これだけ揃っていれば、ころりと騙された人は多いのではないでしょうか。
そのくらい説得力があります。
本当に面白い本です。
鼻で歩いたり飛び跳ねたりしている動物達の姿には大笑いしてしまいます。
(2004.7.13)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『鼻行類』
新しく発見された哺乳類の構造と生活
- 著:ハラルト・シュテュンプケ Harald Stumpke
- 訳:日高敏隆・羽田節子(ひだか としたか・はねだ せつこ)
- 出版社:思索社
- 発行:1987年
- NDC:489(動物学)哺乳類(←著者に敬意を表して!)
- ISBN:4783501459; (最新版)9784582762891
- 118ページ
- モノクロ
- 原書:”Bau und Leben der Rhinogradentia” c1972
- 登場ニャン物:-
- 登場動物:(鼻行類各種)
目次(抜粋)
- 序論
- 総論
- 各グループの記載
- 単鼻類(Monorrhina)
- 古鼻類(Archirrhinoformes)
- 軟鼻類(Asclerorhina)
- 漫鼻類(Epigeonasida)
- 管鼻類(Hypogeonasida)
- 地鼻類(Georrhina)
- 硬鼻類(Aclerorrhina)
- 跳鼻類(Hopsorrhinida)
- 多鼻類(Polyrrhina)
- 四鼻類(Tetrarrhina)
- 六鼻類(Hexarrhina)
- 長吻類(Dolichoproata)
- 参考文献
- あとがき
- 補遺
- 訳者あとがき
- 索引