万城目学『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』
かのこちゃんの家に突然現れたアカトラの猫。
かのこちゃんは、小学校1年生になりました。つい最近まで自分の親指を一日中ちゅうちゅう吸っているような幼児だったのに。
かのこちゃんちには、柴犬の玄三郎がいます。もう老犬です。
ある雨の日、どこからともなくアカトラの猫がやってきて、玄三郎の犬小屋に入りました。犬と猫なのに、ケンカするどころか、ふたりはたちまち、夫婦のように仲良しになってしまいました。それがマドレーヌ夫人です。お母さんが焼くマドレーヌと、毛の色が似ていたので、かのこちゃんが名付けました。
かのこちゃんには、新しいお友達もできました。お父さんに教えてもらった言葉の通り「フンケーの友(刎頚之友)」です。
マドレーヌ夫人も、地域の猫社会にすぐ馴染みました。「外国語」を話せるマドレーヌ夫人は、猫集会では尊敬されているほどです。
ある日、物知りな玄三郎はマドレーヌ夫人に「猫股」の話をしてあげました。するとその直後、マドレーヌ夫人は不思議な体験をします・・・
* * * * *
小学校にあがったばかりの女の子と、猫たちと、老犬のお話。全員が同等に扱われています。人間>動物でもなく、年上>年下でもなく、女の子も、猫も、犬も、対等です。
大人から見れば微笑ましいだけの日常生活ですが、1年生のかのこちゃんにとっては、毎日が冒険のようなもの!ワクワクしたり、ションボリしたり、ドキドキしたり、ニコニコしたり、なかなか大変なのです。新しい言葉も覚えます。新しい体験もします。小さな女の子の心理が、いきいきと描かれていて、思わず「そうそう、私もこんなだったっけ」とにんまりしてしまう人も多いでしょう。
また、人間から見ればのんきに日向ぼっこしているばかりなような猫たちも、猫たち自身からしてみれば、けっこう色々とあるのです。なかでも大事な集会場所である空き地におこった異変は、猫たちには大事件でした。
さらに、マドレーヌ夫人にいたっては、なんとも奇妙な「猫股体験」をしてしまうのです。いったいどうなっているの!?
しかし・・・
かのこちゃんとマドレーヌ夫人がその後に経験することは、猫股体験より、もっと心に響くことなのでした。ほのぼのと読んできて、最後にちょっとしんみりしてしまう、そんな出来事です。
小学生から楽しめる本だと思います(私の読んだ文庫本では漢字のルビが少ないので、さすがに1年生では無理だと思いますが)。主人公は女の子ですけれど、男の子が読んでも多分おおいに楽しめる!半分は猫の話なんですしね。
なお、猫同士/犬同士は会話しますし、動物たちは人間の言葉をかなり理解していますけれど、人間には猫の言葉も犬の言葉もまったく理解できません。それでも、かのこちゃんはマドレーヌ夫人のことを、子どもならではの鋭さで誰よりも理解しています。
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』
- 著:万城目学(まきめ まなぶ)
- 出版社:株式会社 角川書店
- 発行:2013年
- 初出:筑摩書房 2010年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:9784041006870
- 227ページ
- 登場ニャン物:マドレーヌ夫人、和三盆、ミケランジェロ、キャンディー、茶子
- 登場動物:柴犬の玄三郎