森村誠一『黒い神座(みくら)』
犬派と猫派の争いが・・・
最初は犬派と猫派の争いからストーリーがはじまる。
犬派代表は勝野夫人。夫の勝野氏は地方新聞の記者である。
猫派代表は独身男性の深田。猫を溺愛し、自分でも4匹飼っている他、野良猫に餌やりもしている。
それが典型的な無責任餌やりなので勝野夫人とトラブっている。
その深田は猫を通じて魅力的な女性と知り合うが、その女性はすぐに愛猫と“心中”してしまう。
その心中事件に疑問を持った深田は、独自に調査を始め、怪しい男を突き止めた。
その直後、深田も失踪してしまう。
その後、ストーリーはとんでもない方向へ進んでいく。
総理大臣の座を狙う政治家。政治家に癒着する企業家。
賄賂が乱れ飛び、陰謀と策略が張り巡られる。
猫が出てくるのは前の方だけで、後は政治小説とでもいうべき、日本の腐った政治の内幕が描かれている。
猫本というより、猫が小細工の一つに使われている推理小説と言うべきだろう。
推理小説が好きな猫好きには面白いと思う。
ところで、次ぎの引用部分は、小説の展開の一部として深い考えも無しに書かれた文章だろうとは思うが、ちょっと反論したい。
だが奇妙なことに犬猫両方を愛する人は意外に少ない。犬派、猫派に別れて歩み寄ろうとしない。犬派はさっぱりとしていて物事にあまりこだわらない性格が多いのに対して、猫派は執着心が強く執念深い。
まず猫嫌いの犬派の言い分は、猫かぶりである。表は猫なで声で甘えかかり、裏で舌を出している。怠け者である。所かまわず子供を産みまくる。臭い。頭が悪い。化ける等々。
これに対して犬嫌いの言い分、吠える(うるさい)。噛みつく。凶暴だ。人を襲う。大食等々。・・・
page13
う~~ん。
私の経験では、確かに猫嫌いの犬派は多い。
「猫なんか大嫌い」と公言してはばからない犬好きは、私が知っているだけでも何人もいる。うちの東となりのおばさんもその一人。
猫をみると容赦なく蹴飛ばす。
が、犬嫌いの猫派は聞いたことがない。
大きな犬は怖い、と言う人はいても、犬よりは猫が好き、という人ばかり、犬を完全否定する猫派なんていないのでは?
犬派はさっぱりしていて、猫派は執念深いなんて、それはないでしょう。偏見もよいところだ。
それから。
猫は猫かぶりだという誤解。
猫は自分に正直なだけです。
自分の感情をごまかしてまでへらへらとお世辞を使わないというだけのこと。むしろ猫かぶりの逆だ。
怠け者?
肉食獣が狩り以外の時間を休息にあてるのは、自然の理にかなったこと。
所かまわず産む?
放置すれば犬も猫も同じように産むでしょう。むしろ犬の方が出子数は多いのが通常では?
猫ほど臭わない動物は少ないし、頭の良さは犬と差はありません。その得意とする分野が少し違うだけで。
化ける?科学の時代になにを仰る?
一方。
犬は吠えるから人に飼われるようになったと言ってよいくらいであって、吠えるのは当然だ。
人に噛みつくのは人が悪い。あるいはしつけ方が悪い。
凶暴なのも同じ。愛情をもって正しく育てれば噛みついたり凶暴になったり、まして人を襲うなんて事はありません。
体が大きな犬が大食なのは当然だろう。
・・・と、ムキになって反論するような箇所ではないかもしれないが、ちょっと気になったので。
あ、森村氏に反論しているのではありませんよ。氏は一般的な主張をまとめただけですから。
世間一般の犬嫌い猫嫌いに反論しているのですよ。
(2004.1.2)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『黒い神座(みくら)』
- 著:森村誠一(もりむら せいいち)
- 出版社:角川春樹事務所 ハルキ文庫
- 発行:2000年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4894566699 9784894566699
- 439ページ
- 登場ニャン物:クロ、その他
- 登場動物:犬