岡崎二郎『Neko2 ネコネコ』

猫語が話せる少女と、猫たちの物語。
猫のミミのお乳を飲んで育った亜紀ちゃん。
いえ、ちゃんと両親(人間の)も揃っています。
ただ、猫のミミが面倒見良すぎる猫だった、というだけのことです。
亜紀ちゃんが始めたしゃべった言葉も「ニャ~!!」でした。
それから8年後。
『亜紀8歳、ミミ13歳。
亜紀こそ、世にも
珍しい、ネコ語の
話せる女の子
なのである。』
(1巻p.9)
ネコ語が話せるだけでなく、身のこなしもまるでネコ、映画のキャットウーマンならぬ、キャットガール。
狭い塀の上を平地のように駆け抜け、垂直な壁を屋根までピョンピョンと跳ね登ります。
ストーリーは、コメント欄でTenzing様がご指摘のとおり、一話完結型でいつもハッピーエンド。
起承転結がはっきりしていてわかりやすく、心地よいテンポで、サラサラと一気読みしてしまいます。
猫達は、ちょっとしたポーズもきちんと描かれていて、とっても魅力的。
日頃からネコを良く観察している人だなという印象があります。
人物の描き方も健全で明るい感じ。
このマンガを読む人の年齢や性別、気分等を問いません。
なお、このマンガは1996年から連載されていたものです。
つまり、今からもう20年近く前に書かれたということ。
読者の方々は、これは少し古い作品だということを念頭に置いて読んでいただきたいと思います。
といいますのも、今と昔では、猫飼育の常識が大きく変わっていますから。
まず、猫を外出自由にすることについて。
現代社会では、まして都市部では、猫は完全室内(敷地内)飼育すべきです。
法律でも今は猫の室内飼育が奨励されています。
マンガの世界では、今なお、外出自由な設定が多く見られるというのは非常に残念なことです。
その方がストーリーを組みやすいというのもあるでしょう。
しかし、仮にも猫が好きな漫画家さんであれば、完全室内飼育にするか、外に出すマンガなら時代設定を大正時代とかにしていただきたいものです。
もうひとつは、去勢避妊手術について。
乱暴猫だったボブが去勢されます。
すると、
『なんだか気の毒ね』(亜紀ちゃん)
『男のにおいのしない雄ネコなんて最低ー!』(雌猫達)
『そりゃあ、タマは男の命ですからね。』(雄猫)
第1巻第7章「雄ネコたちの挽歌」より
等々のセリフ。
そして
虎三郎はNo.1に返り咲いて、仔づくりにいそしんでいた。6匹の雌ネコに、合計30匹の仔ネコを産ませ、まさに我が世の春だった。
『フ・・・・・・
この楽しみが、一生味わえん訳か。あわれな奴よ。』
第1巻第7章「雄ネコたちの挽歌」より
なんてコマも。
ストーリー的には、このあと、去勢されたボブは、未去勢猫達より勇敢なところを見せ、去勢前は相手にされなかった美人猫からも見直されます。
性格が穏やかになり、子猫たちに慕われ、飼い主の愛情も深まります。
去勢手術により、ボブは、ただの乱暴猫から、男の中の男的猫に変貌するのです。
ハッピーエンドです。
ですが、上記のセリフ、今の私が見ると、ちょっともやもやするものがあります。
他ならぬ主人公の亜紀ちゃんが去勢手術に否定的な発言をしたり、30頭も野良の子を産ませたことが自慢の種だったり。
その子たち、その後どうなるの?
平成時代も終わろうとしている今、去勢避妊手術は、選択肢ではなく、飼い主の義務です。
このマンガの時代は、猫好きでもまだ、「去勢って可哀想かもしれないけど、意外と大丈夫なんだよ」的スタンスのようですが、今や去勢避妊手術は「嫌でもしなくちゃならない義務」と心得るべきです。
猫族のために、不幸な子猫を増やさないために、どうか手術をお願いします。
参考:去勢避妊手術を怠ると?
(2015.3.12.)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『Neko2 ネコネコ』
- 著:岡崎二郎(おかざき じろう)
- 出版社:小学館 ビッグコミックス増刊号
- 発行:1998年
- NDC:726(マンガ、絵本
- ISBN:4091846912 9784091846914(第1巻)
- 登場ニャン物:ミミ、グレイ、チョメ、チビ、タマ吉、アン、ポロ、ラック、たま子、ボブ、虎三郎、桜子、その他多数
- 登場動物:パンジー(アイリッシュ・ウルフハウンド)、他
【推薦:Tenzing様】
これぞ正統派猫漫画ではないでしょうか、その名も「Neko2(ネコネコ)」。
「IWAMAL」と同じくビッグコミックスから出版されています。
しかし子どもでも大丈夫・・いえ、子どもたちにこそ読んでほしい、夢と愛が溢れる、人&猫族の大冒険漫画なのです!
飼い猫ミミという素晴らしい乳母猫に育てられた(お乳までもらった)主人公の亜紀ちゃん、8歳になるころには立派な猫語を操れるスーパーキャットガールに成長!
そんな亜紀ちゃん&町内猫軍団(野良猫から飼い猫まで!)が、時には悪人相手に大立ち回り!
時には困っている猫のための人(猫)助け!と大活躍する、一話完結タイプの猫だらけ漫画。
ゲラゲラ笑ったり、ハラハラドキドキしたり、ジーンと感動するお話だったり、とにかく一話一話がきちんと丁寧に描かれていて、また猫の容姿もリアル過ぎずデフォルメ過ぎず、ちょうど良いタイプの絵柄で、飽きさせない内容となっています。
何より素晴らしいのが、そのオチ。
全話すべてがハッピーエンドなのです。
動物たちとの死に別れシーンは一切ありませんし、例えば悲しくなるようなシビアな「野良猫を増やさないために自治体がとある対策をとる」というお話が一巻にあるのですが、それ対して亜紀ちゃんのとる行動がどこかコミカルでクスリとしてしまいます。
ほんの一瞬、現実を忘れさせてくれるような、ほんわかと温かくコミカルで夢溢れる、そんな猫漫画です。
(そして表紙の本物猫さんが可愛い!)
(2015.02.28.)
*サイトリニューアル前にいただいておりましたコメントを、管理人が再投稿させていただきました。