おぷうのきょうだい『俺、つしま』

ツシマヤマネコに似た、その猫は。
以前はジジイと暮らしていた。
食べ物は、人間の残飯ばかりだった。
ジジイが、周囲に、猫にデレデレしている爺さんだと思われるのを嫌ったからだ。
それでもツシマは幸せだった。
冬でもジジイと一緒に寝れば暖かかった。
「ずっと いっしょだぞ ツシマ」
(うん)
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ところが、はじめて猫缶と猫ミルクを買ってきてくれた夜。
「さて 少し疲れた
一緒に 寝よう ツシマさん」
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と言われて一緒に寝たが、・・・
ジジイは それきり 目を さまさなかった
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そして、家もなくなり、ツシマは、ニンゲンも家もごちそうも消えるものだと学習した。

つらい野良猫暮らしのあと、ツシマはまたあるニンゲンに出あう。
そして、そのニンゲンと暮らすようになる。
その人は、
そこそこの年齢の女性だが、猫たちは、なぜか自分たちの世話をしてくれる老人だと思っている。これまでたくさんの猫と暮らして食た。虫が嫌い。
「登場猫と人」より page4
そう、本当は女性なのに、なぜか老人、それも男、「おじいちゃん♀」の姿に描かれている人物。
猫たちは可愛く、写実的に描かれているのに、この「おじいちゃん」は、思い切りデフォルメされた、ヘナヘナな絵で・・・正直、かなりキモチ悪い(汗)
頭は剥げて毛が三本、常に鼻毛が出ていて、服も着ずノッペラボウで、全身青色!
まるで宇宙人?それも、かなり出来損ないな宇宙人(笑)。

リアルな表情がなんとも魅力的な猫たちと、不気味にデフォルメされたおじいちゃんとの対比が、あまりに強烈で。
正直、本を開いた瞬間、引きました・・・
ネット上で公表されていた猫マンガなのですが、私、全然見たことがなかったんです。
前知識無しに、表紙だけ見て買ったマンガでした。
に、しても、
女性のことを、こともあろうに、鼻毛が出っぱなしなおじいちゃんの風貌で描くって・・・?
著者の説明を読んで、少し納得できました。
「おぷうのきょうだい」というのは兄弟ユニットで、作画を兄、文章・ストーリーを妹が担当しているそうです。
なるほどね。
あの絵は男性の絵だにゃ。
猫の「行為あるある」的なマンガは、数えられないくらいたくさんありますが、猫の「表情のあるある」マンガは、意外と少ないものです。
マンガとはふつう、デフォルメされ、簡素化され、あるいは擬人化された表情で描かれるものが多いですから。
その点、この「俺、つしま」に出てくる猫達の表情は、まさに本物の猫の顔です。
大げさな表情や、「つくられた」顔は、ほとんどありません。
あるのは、ほんのちょっと鼻のまわりがふくらんでいるだけだったり、ほんのちょっと目が三画にしかめられているだけだったりの、あたりまえな猫の顔です。
あと、視線。
猫の目は口よりずっとモノをいう、その視線の向け方の表現が上手だと思います。

ですから、猫の表情がまったく分からない猫嫌いさんには、この絵の楽しさがわからないかもしれません。
猫と暮らしている人なら、「やだ、もう!そうそう、この顔、これよ!」の連続となるでしょう。
このマンガ、「俺、つしま」で検索すれば、たぶん、無料で読めるのではないかと思います。
でもやっぱり、私は紙の本が好き♪
猫好きの貴方も、どうぞ、できればネットと紙の本の両方で!

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『俺、つしま』
- 著:おぷうのきょうだい
- 出版社:小学館
- 発行:2018年
- NDC:726(マンガ、絵本)
- ISBN:9784093886178
- 175ページ
- カラー
- 登場ニャン物:つしま、ズン姐さん、ちゃー、オサム
- 登場動物:犠牲になったヤモリさん、セミさん
