澤田瞳子編『大江戸猫三昧』
猫が出てくる時代小説ばかり集めた短編集。
作家もそうそうたるメンバーばかりで、とても面白かった。
「猫騒動」 岡本綺堂
七之助は、老母おまきと二人暮らし。孝行息子として知られている。おまきは大の猫好きだった。猫たちが増えすぎて近所から苦情がきたことから、話が思わぬ方向へ。
「黒兵衛行きなさい」 古川薫
登場ニャン物=黒兵衛
伊丹仙太郎は、欲はないが腕は立つ。出世をかけた大事な試合、決勝の相手は案のじょう、宿敵啓之助。さて?
「猫のご落胤」 森村誠一
登場ニャン物=シロ、ナナ
一代で身代を築き上げて、あとは家督を息子に譲り、自分は暢気な楽隠居、となれば、誰もが憧れる生活だが、五兵衛は退屈で仕方がない。猫を相手の毎日、その猫が縁で妖艶な美人と知り合い、さらに連続犯罪へとストーリーは発展する。
「おもしろい猫」 池波正太郎
登場ニャン物=ごろ
いつの時代でも三角関係は恐い。気の弱い男と気の強い女がからんだ三角関係はとても恐い・・!
「猫姫」 島村洋子
登場ニャン物=福姫
将軍家慶の大奥で、運命にもてあそばれたふたり。姉妹と名乗り合うことさえできず、ふたりにとっての慰めは猫の存在だった。
「化猫武蔵」 光瀬龍
あの宮本武蔵が登場する短編。出てくるのは、化け猫というか、化け猫使いというか?豪快なイメージの武蔵と猫との取り合わせが面白い一編。
「大工と猫」 海野弘
登場ニャン物=ゴン
猫の話には昔から、恐ろしい化け猫話と、けなげな恩返し話とがある。こちらは後者。寄り添うように生きてきた貧しい大工と猫ゴンの話です。
「猫清」 高橋克彦
登場ニャン物=祝吉、滝太郎
大の猫好きで「猫清」とあだ名されていた男が首を吊って死んだ。残された猫たちを哀れんで引き取った人が疑問を感じる。それほどの猫好きがなぜ猫たちを置き去りにした?不自然ではないか?事件の臭いをかぎ取って調べてみると・・・?
「野良猫侍」 小松重男
登場ニャン物=虎太郎
長谷川冬馬と樹緒は猫好き夫婦。野良猫たちを可愛がっていた。特になついているのが虎太郎。冬馬はお手先同心という身分で、わずか三十俵三人扶持という薄給だが、ささやかながら幸せな毎日ではある。ある日、火付盗賊改という加役を申しつけられて・・・
猫好きにとっては嬉しいお話です。
「薬研掘の猫」 平岩弓枝
登場ニャン物=たま
飼い猫がいなくなったと番屋に訴えてきた女がいる。たかが猫一匹、されど、女があまりにうるさいので、調べてみると・・?
ベストセラー「御宿かわせみ」シリーズの中の短編。猫は活躍ないものの、猫がキーワードとなって謎が解決する。
(2005.7.19)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『大江戸猫三昧』
副題、シリーズ名など
- 編:澤田瞳子(さわだ とうこ)
- 出版社:徳間文庫
- 発行:2004年
- NDC:913.6(日本文学)小説
- ISBN:4198921547 9784198921545
- 346ページ
- 登場ニャン物:レビュー本文参照
- 登場動物:-