若竹七海『ポリス猫DCの事件簿』

若竹七海『ポリス猫DCの事件簿』

 

猫島には、一人のお巡りさんと、1匹のポリス猫がいた。

舞台は、神奈川県葉崎市猫島。

神奈川県の盲腸とよばれるひょろっとした葉崎半島の西に位置する小島で、潮が引くと砂州ができて陸続きになる。
正式名称は「砂渡島」らしいけれど、人より猫の数が多く、鎌倉時代の昔からもっぱら「猫島」と呼ばれている。

――という、これはもちろん、架空の都市の、架空の島である 。
神奈川県の江の島ではないし、宮城県の田代島でもない。

しかし、いかにも実在しそうな島。

猫島には臨時派出所がある。
当初は海水浴シーズンだけのつもりが、猫ブームもあり、夏が過ぎても観光客は減らずトラブルも減らず。
結局、通年営業となってしまっている。

勤務するお巡りさんは七瀬晃の一人だけ。
通いである。
時々泊まり込む。

おっと、もう一人、いや、もう1ニャンいた。
七瀬巡査より優秀な相棒。

言わずと知れた、ポリス猫DCである。

ミステリー短編集。
全体としてゆるく繋がってはいるものの、個々を独立で読むことも可能だ。
しかしできれば前作『猫島ハウスの騒動』から読めばなお楽しめると思う。

コージーミステリと分類される軽いミステリとはいえ、推理小説は推理小説ですから、例によって内容は書きません。
しかし、面白いことは保証しても良いくらい。
私的には最高に楽しめました。

猫島というちっぽけな小島は、ミステリの王道『密室トリック』に近い設定。
七瀬巡査はふだんは愛すべきお人よし、けれど時折鋭い推理をひらめかせる。
登場人物はどれも個性豊か、しかも、ほとんどが大の猫好き。
町中あちこちに猫の遠景、近景、介入。
ポリス猫DCはでしゃばらず、猫らしく傍観を決め込んでいるようでいて、肝心なところでは人をしのぐ大活躍。

しかし、何より良かったのは、これほど「猫達について安心して読める」ミステリーは少ないかも、と思われるくらいに、今日の猫事情が正しく扱われていた、ということでしょうか。

猫島の入口には「ようこそ猫島へ 猫は捨てないでね」の看板。(それでも猫を捨てに来る人がいたりするけど、そんなところも現実的。)
猫屋敷殺人事件で残された猫達に里親をさがしてあげる警官。
見た面は武骨なデカ面だけど、なんと19匹に里親をみつけ、残った老猫11匹にも見つけようと必死だ。

良き猫理解者がいる一方で、猫を金儲けの手段に使う困った猫好きも、当然出てくる。
しかしそんな人は最後はちゃんと報いを受ける設定だからご安心を。

猫島の猫たちは、海に囲まれた小さな島で、安心してのびのびと暮らしている。
まさに猫楽園!

若竹七海さんという作家は、猫ボランティアにかかわったことのある方ではないかと思われる節々もあり、・・・いえ、私は何も知りませんが、もしかして本当におありなんでしょうか?

猫好きさんには大推薦の一冊です。

(2012.10.8)

若竹七海『ポリス猫DCの事件簿』

若竹七海『ポリス猫DCの事件簿』

若竹七海『ポリス猫DCの事件簿』

若竹七海『ポリス猫DCの事件簿』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『ポリス猫DCの事件簿』

  • 著:若竹七海(わかたけ ななみ)
  • 出版社:光文社
  • 発行:2011年
  • NDC:913.6(日本文学)推理小説
  • ISBN:9784334927424
  • 287ページ
  • 登場ニャン物:DC、ツナキチ、メルちゃん、ヴァニラ、弁慶、ヴィクトリア、豹太郎
  • 登場動物: -

 

目次(抜粋)

  • ポリス猫の食前酒
  • ポリス猫DCと多忙な相棒
  • ポリス猫DCと草もちの謎
  • ポリス猫DCと爆弾騒動
  • ポリス猫DCと女王陛下の秘密
  • ポリス猫DCと南洋の仮面
  • ポリス猫DCと消えた魔猫
  • ポリス猫DCと幻の雪男
  • ポリス猫のデザート

 

著者について

若竹七海(わかたけ ななみ)

立教大学文学部史学科sつ。一九九一年、。『ぼくのミステリな日常』でデビュー。以降、青春ミステリから歴史ミステリ、ホラーまでジャンルを問わず、多彩な作品を発表。本作と同じく葉崎を舞台にしたコージー・ミステリに『ヴィラ・マグノリアの殺人』 『古書店アゼリアの死体』 『猫島ハウスの騒動』 『プラスマイナスゼロ』 『みんなのふこう』 がある。他の著書に『名探偵は密航中』 『死んでも治らない』 『黒いうさぎ』など。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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