ウェストール『猫の帰還』
猫は、「大切な人」と再会するために何マイルも・・・。
猫にまるでテレパシーのように驚異的な飼い主追跡力があることは、科学的にも実証されている。
この小説は、実在した猫、ロード・ゴートの話に基づき、事実と創作を織り交ぜて書かれたものだという。
舞台は、第2次世界大戦下のイギリス。
黒猫ロード・ゴートの「大切な人」は、戦争に取られてしまった。残された家族は、ロード・ゴートを連れて疎開するが、ロード・ゴートは気に入らない。
ある日、懐かしいあの手の中へ戻るために、ロード・ゴートは旅立った。
猫の奇跡的な霊感が、大切な人のいる方向を正しく教えてくれるのだ。
ところが、「大切な人」は空軍のパイロットだった。指令一枚で頻繁に移動する。
追いかけるロード・ゴートも、あちこちさまよわなければならなかった。
途中で様々な人にであう。
典型的な軍人である軍曹、年老いた馬車屋、夫も生きる力もなくしてしまった未亡人、ドイツ兵の銃弾が怖くて堪らない狙撃兵、その他。
ロード・ゴートは、人間達の人生に少なからぬ影響を与えながら、たくましく生き抜く。
遍歴の間に、2度も子猫を生み、何度も爆撃にあい、爆弾の暴発で聴覚を失い、ときには飢えでフラフラになりながらも、ひたすら「大切な人」を探し続ける。
私は戦争が大嫌いだし、戦争小説も戦争映画も好きではないが、この本は素直に読めた。
それにしても、猫の視点から見ると、人間の何と愚かに見えることか。
とてもお勧めな一冊。
(2002.4.10)
※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。
『猫の帰還』
- 著:ロバート・ウェストール Robert Westall
- 訳:坂崎麻子
- 出版社:徳間書店
- 発行:1998年
- NDC:933(英文学)長編小説
- ISBN:419860911x 9784198609115
- 264ページ
- 原書:”Blitzcat” c1989
- 登場ニャン物:ロード・ゴート、ヤセ
- 登場動物:-