書評:鴨居羊子『のら犬のボケ・シッポのはえた天使たち』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

 

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』収容。

『のら犬のボケ』

著者は犬が好きで好きで堪らない。それも、いわゆる、ごく普通の雑種犬たち。

マダムに抱かれた血統書付き小型犬なんてのは気に入らない。あんなのは‘犬’じゃないと思う。犬ならもっと自由でノビノビとしてなきゃ。そう、野良犬たちのように。外見はいかに痩せて汚れていようと、野良犬こそが、もっとも犬らしく生きている犬たちだ。彼等の姿も、生き方も、人間社会にもまれながら懸命に知恵を絞って生き抜いているたくましさも、みんな大好き。なによりも彼等は「尊い自由」をもっている。

それから、人間と一緒に、人間と同等に働く犬たちも大好き。屋台を引っ張る犬たち、店番をする犬たち。どの犬も、飼い主にとっては無くてはならぬ存在だ。犬の方も労働の価値をちゃんと理解していて、脇目もふらずに働いている。その誇り高き勇姿が好き。

著者は、この時点では犬は飼っていない。飼い犬より、犬は自由な野良の方が好ましいと思っていたからだ。本の時期は「大阪の街角に、戦後の色がまだ消えずにのこっていたころ」。当時の街には野良犬がまだ沢山いた。飼い犬も放し飼いが多かった。

そのかわり、‘犬捕り’もいた。野良犬たちはいつ野犬狩りにあうかわからなかった。
目の前で捕獲された犬もいる。運良く救い出された犬もいたけれど、ほとんどはそのまま二度と戻らなかった。

犬捕りに捕まらずとも、当時とて、野良犬の生活は楽ではなかった。たまたま良い人たちに囲まれれば、毎日残飯を貰って気楽に暮らすことができる。けれども病気の体を引きずって、やっと生きている犬もいた。まだ幼いのに捨てられる子犬も後を絶たなかった。

痩せた野良犬に会えば、あわててパンを買いに走る。店番の犬の好物がカリントウとしれば、迷わず買ってその場で与える。犬捕りに捕られたと知ってワアワア泣き、死ぬと思った犬が助かって祝杯をあげる。捨て犬を見つけてウロウロと飼ってくれる人を探す。子供が嬉しそうに子犬を抱けば、著者も心から幸せになる。

著者の得意は独特な「犬語」である。

(今日は-)
という挨拶だけでも、
「プレポリョウ」
といったり、
「シュニマシュール・リイ」
となったり、
「ロウ、ロウ、プリュニイ・プリー」
となったり、ざっと百種類ほどもある。
page18

平成の今より、もう少し、犬も人間ものんきだった昭和。今よりは貧しかったけれど、今よりずっと活き活きと生活していた時代。ここに描かれる犬たちはどの子も本当に魅力的だ。著者の視線もすばらしい。犬たちを実に的確に表現している。

断然お奨めの犬エッセイです。

『シッポのはえた天使たち』

高度成長期の昭和は、街の姿を変えた。野良犬たちも居なくなった。
犬好きの著者は耐えきれず、ついに犬を飼うことにした。

選んだのは、‘セパードとコリーのアイノコ’だった。鼻吉と名づけた。

その鼻吉が死んでしまった。

動物は先に死んでしまうから、それが悲しくてもう飼わない、と多くの人が言うが、私はあんまり悲しすぎたので、意地でも同じ犬と、またひつこく暮らしたいと思って、同じ種類--つまりセパードとコリーのアイノコを手に入れた。
  同じ顔と体つきで名前まで同じなのに、まったく違う犬だ。しかし、前のと同じ動作で、同じ大きな体で私についてまわる。
page189

本作品『シッポのはえた天使たち』は、その二代目鼻吉と、猫達の話である。

鼻吉をつれて海へ行ったら、子猫を拾ってしまった。子猫は、「しかと私と犬をめがけて命がけで走ってきた。」片方の掌にのっかってしまうほどに、小さな命。ふるえる子猫を抱いて、著者と鼻吉は家へと走る。

子猫は次郎吉と名づけられた。

大きな鼻吉は子猫を可愛がった。子猫が眠れば付き添って守り、飼い主の著者が近寄ってさえ鼻にシワをよせてうなった。著者は、子猫が自分より鼻吉に親しむのを、少々嫉妬しながら見つめつつ、一人と1ワンと1ニャンで賑やかなお正月を迎えようとした・・・

なのに!また子猫を拾っちゃった!

その後、さらに猫が増える。こうして、1人1ワン3ニャンの、愉快な日々がはじまる。
(2010.4.23)

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『のら犬のボケ・シッポのはえた天使たち』
『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』収容

  • 著:鴨居羊子(かもい ようこ)
  • 出版社:国書刊行会
  • 発行:2004年
  • NDC:914.6(日本文学)随筆、エッセイ
  • ISBN : 4336046093 9784336046093
  • 413ページ
  • 口絵、挿絵
  • 登場ニャン物:次郎吉、三吉、ウィリー、他
  • 登場動物:犬

 

目次(抜粋)

  • のら犬のボケ
  • シッポのはえた天使たち
  • のら猫トラトラ
  • 鴨井洋子の愛の形 熊井明子
  • 解説 早川茉莉

 

著者について

鴨居羊子(かもい ようこ)

大阪府豊中市生まれ。新聞記者を経て「ものをつくる仕事をしたい」と独立、下着デザイナーとなる。戦後、白い質素な下着しかなかった時代に、今では当たり前のものになったカラフルなスリップ、セクシーなガーターベルトなどチャーミングな下着を売り出し、一躍時代の寵児となる。デザイナー、画家として活躍する傍ら、文筆活動にも才能を発揮し、軽妙にして幻想的、快活にして味わい深い、美しく魅力的なエッセイを数多く残している。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』

『鴨居羊子コレクション2 のら犬・のら猫』
7

猫度

4.0 /10

面白さ

8.5 /10

猫好きさんへお勧め度

8.5 /10

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