香取章子『犬と猫のための災害サバイバル』

香取章子『犬と猫のための災害サバイバル』

 

いざというとき役立つ、我が子を守る方法。

大地震、洪水、噴火、台風、原子力事故・・・日本はいつどんな災害に見舞われるか分かりません。いざという時に慌てない為の本です。

有珠山噴火の時は、300匹以上の犬猫が取り残されました。避難勧告が出たとき、人々は「どうせすぐ戻れる」と思い、犬猫を自宅に残したまま避難してしまったのです。せいぜい3日ほどのフードを残しただけで。避難生活が長引くに連れ、人々の焦燥はつのっていきます。そしてようやく自宅に戻れたとき、人々が発見したのは、無惨に飢え死にした愛犬・愛猫たち・・・中には57日も生き延びた猫などもいましたけれど、それはよほどの幸運に恵まれた例外というべきでしょう。

著者は何回も訴えます。
伴侶動物は絶対に置き去りにするな!必ず一緒に逃げろ!

避難勧告が出されて、避難所へ避難する場合、多くの人は「避難所に動物を連れて行っても良いのだろうか」と躊躇するのではないでしょうか。著者はそれに対してもはっきりと書いています。迷わず連れて行け、と。

例えば東京都の場合。

「東京都地域防災計画」で、東京都は明確に、動物の避難や救護活動を行うことを、都の防災計画の中に組み込んでいます(下の引用参照)。

都道府県や各市町村によって、方針は違います。あなたが住んでいる地域の方針をあらかじめ調べておいた方がよいと思います。ですが、天下の東京都が堂々とこういう方針を打ち出しているのです。他の地方だって、今のご時世、「動物なんか知らん」とはいえないでしょう。断じて言わせてはなりません。

仮設住宅にしても同じです。「仮設住宅はペット禁」という法律はないそうです。阪神・淡路大震災のときも、「ペット禁」とは出していない。もっとも、事なかれ主義の自治体は、非常に消極的な表現(ペット禁とうけとれるような表現)を使って、逃げようとしていました。そのため動物を連れては入れないと誤解して路上生活を続けた人も数多くいます。

さらに、復興住宅が建てられたとき、最初は他の市営住宅などに習い「ペット禁」にしようとしましたが、「あの震災を一緒に生き延びた動物を今更見捨てろというのか」と反対運動が起こり、海外からも抗議文が殺到し、ついに「ペット可住宅」が建てられました。あきらめてはいけないという良い例です。

伴侶動物は同行して避難するのが大原則。マナーは守らなければなりませんが、最初から「どうせ入れてくれないだろう」と悲観視する必要はまったくありません。快く受け入れて貰うためには、普段からの躾が大切。迷子札やチップなどの個体識別法も重要です。災害時にはボランティアも動きます。

あなたの動物を、絶対に見捨てるな!置き去りにするな!何があってもあきらめるな!
だって、猫も犬も、大切な我が子、家族なんですから!

【東京都地域防災計画 震災編 (平成15年修正) 東京都防災会議】
第11章 医療救護
第5節 保健衛生
7 動物愛護

災害時には、負傷又は放し飼い状態の動物が多数生じると同時に、多くの動物が飼い主とともに避難所に避難してくることが予想される。
都は、動物愛護の観点から、これら動物の保護や適正な飼育に関し、区市町村等関係機関や都獣医師会等関係団体との協力体制を確立する。

(1)被災地域における動物の保護
飼い主のわからない負傷または放し飼い状態の動物等の保護については、迅速かつ広域的な対応が求められることから、都は、区市町村、都獣医師会等関係団体をはじめ、動物愛護ボランティア等と協力し、動物の保護を行う。

(2)避難所における動物の適正な飼育
都は、避難所を設置する区市町村と協力して、飼い主とともに避難した動物の飼育について適正飼育の指導等を行うなど、動物の愛護及び環境衛生の維持に努める。
ア 各地域の被害状況、避難所での動物飼育状況の把握及び資材の提供、獣医師の派遣等区市町村への支援
イ 避難所から保護施設への動物の受入れ及び譲渡等の調整
ウ 他県市への連絡調整及び要請

(3)動物愛護の活動方針
ア 都獣医師会、動物関係団体等の設置する「動物救援本部」が中心となり、被災動物の保護、援護を行う。
イ 都は、「動物救援本部」を支援する立場から、情報の提供、「動物保護班」 「動物医療班」の援護活動への応援及び活動の拠点としての場の提供を行う。
ウ 「動物保護班」 「動物医療班」は、被災住民への動物援護に関する情報の提供、被災動物の保護、搬送及び応援要請に基づく避難所等での動物医療に携わる。

(4)「動物保護班」 「動物医療班」編成
ア 動物保護班 ( 動物監視員(獣医師)1名、 動物指導員(運転・技術)2名 )
特別区内 5班   多摩地区 4班
イ 動物医療班 ( 動物監視員(獣医師)2名、 動物指導員(運転)1名 )
特別区内 2班   多摩地区 2班
注:2004年7月5日現在。法律はしばしば改定されます。お調べになるときは最新の情報をお求めください。

(2004.07.15)

香取章子『犬と猫のための災害サバイバル』

香取章子『犬と猫のための災害サバイバル』

香取章子『犬と猫のための災害サバイバル』

あなたの子のために、あなたも準備を。

 

※著作権法に配慮し、本の中見の画像はあえてボカシをいれております。ご了承ください。

 

『犬と猫のための災害サバイバル』
いざというとき役立つ

  • 著:香取章子(かとり あきこ)
  • 出版社:学習研究社
  • 発行:2002年
  • NDC:645.6(家畜各論・犬、猫)
  • ISBN:4054015093 9784054015098
  • 239ページ
  • 登場ニャン物:
  • 登場動物:

 

目次(抜粋)

はじめに
第1章 大地震発生!パニックのなかで犬・猫の命を守る
第2章 噴火、水害、原発事故…災害警報が出されたら
第3章 犬・猫がけがや病気になった!応急手当をどうする?
第4章 家で暮らせない!犬・猫といっしょに避難する
第5章 日頃のしつけがものをいう!避難所で犬・猫と暮らす
第6章 犬・猫を預けたい!災害時の救いの手「動物救護センター」
第7章 日常生活へ復帰の第一歩 仮設住宅で犬・猫と暮らす
第8章 家を再建?復興住宅?犬・猫と暮らせる新居へ移る
第9章 長びく避難生活 犬・猫の健康とストレス
第10章 どうしてもいっしょに暮らせない 犬・猫の里親を見つける
エピローグ 犬・猫を守りぬきいっしょにサバイバルするために
おわりに
おもな参考文献

 

著者について

香取章子(かとり あきこ)

出版社勤務を経て、フリーランス・ライターとなる。阪神・淡路大震災直後、被災地に入ったのを手始めに、災害と伴侶動物をテーマに取材、執筆をつづける。

(著者プロフィールは本著からの抜粋です。)


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